「仕事の基礎力」補完計画|第29項:戦略的に働こう(やりたい を できる にしてから転職する)(p.174~)

AUTHOR :  田中 耕比古

チャンスは降ってこない

本連載は、2016年11月に発売された『デキる人が「あたり前」に身につけている! 仕事の基礎力(すばる舎)』の内容に、具体例や詳細な説明を追加したり、ページ数の関係で割愛せざるを得なかった図版などをご紹介する解説記事です。(書籍の概要はコチラをご参照ください。)

Just Do It. でも Start small でね。

書籍内では「やってみたいという場合には、まず、小さくはじめよう(やってみよう)」というお話をしました。

その際に、リスクを許容範囲内に収めることがとても大切だというお話もしているのですが(実際、僕自身、弊社社長の「やってみたい」に巻き込まれて爆死してることが多いので、そりゃぁディフェンシブにもなりますよ)、今回は、「前向きな方の田中」に出陣いただきまして「小さくはじめるやり方」について、具体的に語ってみたいと思います。

情報は「情報の発信者」に集まる⇒じゃぁ、発信してみよう!

コンサルタントとして漸く人並みの能力を身につけたころ、先輩の桂隆俊さん(彼はコンサルタントではなく、事業家でした)に「もっと情報を発信しろ。自分は専門家だと世間に発信しろ。」と頻繁に言われました。(まぁ、それよりも「さっさと起業して自分でビジネスをやれ」という言葉をいただく頻度の方が多かったのですが・・・)また、ちょうど同じころ、アクセンチュア戦略グループのリード(当時)であった三谷宏治さんに「若いうちから発信しないとダメだよ」というお言葉もいただきました。

ここで、非常に強くプッシュされたのが「情報を発信する人のところに、情報は集まる」ということでした。「こいつに訊けば何かわかりそう、参考になりそう」と思うと、人は相談しに来ます。相談に来るという人は、当然ながら何かしらの困りごとを抱えているわけです。この「困りごと」の多くは、特定の業界・領域の最新情報です。(そうでないとしても、少なくとも、現場の生の声ではあります。)これらの声に常に触れることができるということは、すなわち「勝手に情報が集まってくる」という状態になっているってことなんですよね。

ちなみに、僕には、若いころから「本を書きたい」という漠然とした思いが昔からありまして、「35歳までに2冊出版する」という目標をひそかに掲げていました。いまこそ、この目標の実現に向けて行動するときだ!と思ったわけですね。とはいえ、一介の社畜コンサルタントだった僕に、「講演したいっス」とか「本を出したいっス」とか言い出す勇気も、お願いするようなコネもなく、さて、どうやって発信したものかなぁと困ってしまったんですね。

まず、書くことから始める

そこで、ブログ、なわけですよ。

とにかく、ブログに書く。1日1記事何か書く。ただ、その際、アフィリエイトとかそういう小銭を稼ぐことを目指すわけでもありませんので、アクセス数が欲しいとかいう気持ちも殆どなく、誰に読まれるわけでもない駄文をタダひたすらに書き溜めていました。とりあえず書き始めてみたものの、書くことが定まらないので「人生のイロハ」というカテゴリを立てて、「いつも思うことだけど」「LOHASな生活」「履き倒れの街、神戸」「人間って、意外と脆い」と、頭文字が「い・ろ・は・に・ほ・へ・と」となるように記事を書きまくる、というようなことをしていました。2007年のことです。このカテゴリは、21記事書いて「年収と社会貢献」という記事で終わったようです。そこから5年程、ときどき休止したり頻度を下げたりしながら書き続け、300記事程更新しました。(もう、ほとんどの記事は非公開にしていますけどね。笑)

ここでトライした何かの物事を、論理的に考えて考察するという取組みは、今読み返してみると、とんでもない間違いや勘違いをしていたりもします。でも、誰かに迷惑をかけるわけでもないので(だってSEOも満足にできていないので、誰の目にも触れないんですよね・・・w)いいんです。チラ裏(チラシの裏)ってやつです。

このブログで、ガンガン書き溜めながら、自分の文章が分かりやすいかどうか、論理的かどうかをチェックしていました。

図解の効果に気づく

そうやって、文章でしっかりと物事を伝えていこうとすると、当たり前ですが、文章力が求められます。それでも頑張って「文章で表現する」ことにこだわっているうちに、日々、コンサルタントとして作成している「パワポの図解」が非常に効果的なコミュニケーションツールなんだなということに気づきました。

いや、気づいたといっても、それまで知らなかったわけじゃないんですよ。ただ、「図解なしで文字だけで伝えるのって、めっちゃ大変」ということが骨身にしみた時に、「じゃぁ、わかりやすい図解ってなんだ?」という逆側からの視点を得られたのが大きかったですね。

水泳に例えると

  • 両手を縛られて海に放り込まれたので、ドルフィンキックを覚えた。(図解なしで文章力を磨いた)
  • 両手が使えたらもっとうまく泳げるのに、と気づいた。(図解の重要性に気づいた)
  • じゃぁ、縛っていた紐を外して、腕の使い方をもっと磨こう、と思った。(日々の業務における「パワポづくり」の意気込みが変わった)

という感じです。この頃から「パワポ職人」としてのスキルが格段に上がりました。やはり、意識(マインド)の問題は大きいのです。

本を書く

2012年に起業した後も、このブログ更新は細々と伝えていましたが、起業から1年がたった2013年11月、弊社のブログが立ち上がります。

そこで、ギックスの本棚と銘打って、書評を書き始めました。また、ニュース斜め斬りと銘打って、時事ネタを解説することも始めました。どちらも、「戦略コンサルタントの視点でみると、当たり前の物事も、少し違って見えるんですよ」ということを主題として掲げて書き始めました。そのうち、漫画や難解な書籍の読み解きも始め、火の鳥バガボンド人月の神話、などを戦略コンサルの視点で読み解いて解説する、ということを行ってきました。

さらに、弊社のメイン事業ドメインである「データ分析」の考え方やコツ、ノウハウを紹介するサイト graffe.jp(グラーフ)を立上げ、幾つかの記事カテゴリを担当して書きまくりました。

それらを繰り返した(合計1000記事程度?)結果、ある程度のPVも取れはじめ、僕自身の文章の型が定まり、それに対して「文章のファン」「書いている内容のファン」が多少でてきました。そして、その流れの中で「このコンテンツは書籍化する価値がある」ということで、出版社さんからお声がかかるようになります。幸運なことに、1冊に留まらず、幾つかのお話を頂くことができたので、「35歳までに本を2冊出版したい」という僕の目標は、上記のような経緯を経て、38歳で2冊上梓するという3年遅れでの実現に漕ぎつけました。(その後も、39歳で1冊、そして、現在40歳で4冊目の出版を目指しています。)

やってみたから今がある

おもしろいもので、1冊書くと、2冊目・3冊目のオファーが来ます。また、その道の専門家だというラベルが付与されるので、相談される機会も増えてきました。(つい先日も、「お前の本を読むより、お前と飲んでるほうがコスパがいい」と言っていただいて、むしろ有難いなと思っています。ごちそうさまです。僕はお寿司が食べたいです。)

一方で、こうして実際に本を書いてみた結果(まぁ、今も執筆活動に取り組んでいますが)、「これ、僕はあまり得意じゃないな」ということに気づきました。また、本を書いたことによってお話を頂く、セミナーや講演、トレーニング講師などの機会についても、「これも、あまり得意じゃないな」ということに気づきました。

執筆や、セミナー、講演、トレーニング講師などは、基本的に「一方通行」のコミュニケーションになります。時間をかけて作り上げたものを、ある程度以上の人数に対して、一方的に伝えるわけですね。これが苦手です。

僕の本業のコンサルティングは、少数のお客様を前に、双方向コミュニケーションを取る活動なのですが、その方がよっぽど向いています。しかしながら、ブログという形式で、日々、物事を斜めに斬り、それを文章(場合によっては図)にまとめていくという行為は、自身のスキルを鈍らせないための訓練としても有効ですし「嫌いじゃないな」と思いました。

つまり「やりたいこと」をやってみて「できること」にしてみた結果、「得意なこと」「苦手なこと」が明確化され、また「本当にやりたいこと」「本当はやりたくなかったこと」も峻別できたわけです。もし、僕が「いつかやりたい」のままで物事を放置し、何の活動も始めていなかったら、きっと、僕は今も、あの頃のまま一歩も前に進めていなかったことでしょう。

仕事も同じ

この話は、本書内で述べた通り、仕事のスキルなどでも同じです。

マーケティングの仕事がしたい、戦略コンサルになりたい、デザインに関わる仕事がしたい・・・ いろいろな「やってみたいこと」があるでしょう。しかし、それを「やってみたい」のまま放置していては、見える世界は変わりません。

出所:仕事の基礎力 p.177

「やりたいこと」には、トライしましょう。そして「やりたい」を「できる」に変えた上で、それを「やらせてもらえる環境」を探すことが、キャリアアップの近道です。王道にショートカットはありません。

ぜひ、トライすることに躊躇せず、未来に向けた”王道”を歩き始めていただければと思います。

関連記事:【ギックスの本棚】仕事の基礎力とは?|高効率で高密度な仕事のやり方を身につけよう

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