いま、住宅展示場業界で「マイグル(Mygru)」の導入が相次いでいます。
本記事では、住宅領域での営業経験を持ち、現在はギックスにてマイグルの導入支援を担う玉川に、業界が抱える課題と、顧客の行動データを活用した新たな住宅展示場運営の形について話を聞きました。
来場者減のいま、住宅展示場に広がる“デジタル化”の波
― 住宅展示場業界で、マイグルをご導入いただく企業様が相次いでいます。まずは、どのような背景があるのか教えていただけますか?
2025年に入り、株式会社RKB CINC(RKB住宅展)、エー・ビー・シー開発株式会社(ABCハウジング)、株式会社サンフジ企画をはじめ、住宅展示場を運営する4社に「マイグル」をご導入いただきました。
その背景にあるのは、住宅展示場への来場者数減少と、デジタル活用を本格的に進めようとする動きの広がりです。
住宅展示場協議会のデータによれば、2025年1月の総合住宅展示場の来場者組数は前年比で7.4%減となり、5か月連続で減少しています。インターネットでの情報収集が当たり前となった今、リアルな展示場に足を運んでもらうこと自体が、どの運営会社にとっても大きな課題となっています。
また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向調査2024」では、不動産業界を含むサービス業のDX取組率は60.1%。金融業・保険業(97.2%)や情報通信業(79.2%)などと比較すると、デジタル活用の伸びしろが大きいことが読み取れます。
住宅展示場はリアル体験を軸にした業態ですが、デジタルを組み合わせることで、運営の効率化と来場者体験の質を同時に高められる領域だと感じています。
| 株式会社ギックス Data-Informed事業本部 Business Execution Division 玉川 之教(たまがわ しなり) Monroe University MBA修士課程を修了後、大手広告会社に入社し、上海赴任を経験。その後、株式会社リクルートに転職し、住宅情報メディア「SUUMO」の営業に従事。宅地建物取引士。現在はマイグルの事業に携わり、マーケティング領域での新しい顧客体験の創出に取り組んでいる。 |
― そうした背景のなかで、実際の住宅展示場運営にはどのような課題が生じているのでしょうか?
最も顕著なのは、「様々な集客施策を行っても、どれが本当に効果的だったのか分からない」ことです。
例えばキャラクターショーや体験会などのイベントを開催しても、それぞれがどれほど集客に貢献したのか、来場者がどのモデルハウスをどれくらい見たのか、ということを定量的に把握しにくいのが現状です。そうなると「前回なんとなく良かったからまたやってみよう」という、現場の経験や感覚に頼る場面が多くなってしまいます。
― それでは施策の改善が難しいですね。
はい。私自身も前職で住宅領域を担当していたので、この悩みは非常によく分かります。
しかし、成果の定量データがないことには、次に何をすべきかの仮説も立てられず、有効な施策につなげることはできません。結果として、出展するハウスメーカーや来場者への価値提供にも限界が出てしまう恐れがあります。
だからこそ、これまで経験や勘の中に埋もれていた現場の手応えを、データとして顕在化し、次の一手に生かしていくことが重要だと感じています。
行動データで“顧客理解”を深める──マイグルが支えるデータインフォームドな展示場運営
― その課題を解決する手段として、マイグルはどう機能するのでしょうか?
マイグルの強みは、オフライン・オンライン両方の「行動データ」を用いて、顧客行動を可視化・分析できる点にあります。
従来のマーケティングでは、購買データやオンラインの履歴を活用して、顧客分析を行います。
マイグルはこれに加えて、「来場した人が、会場内で、いつ・どこで・何をしたのか」という、“購買の手前”に発生するリアルな行動履歴を、キャンペーン参加などを通じて行動データとして取得します。
これを分析することで、これまで見えなかった来場者の行動や関心を顕在化させ、より解像度の高い顧客理解を可能にするプラットフォームなんです。
住宅展示場で活用すると、「どんな属性の来場者が、どのイベントに来たか」「どのモデルハウスを、何棟回遊したか」「滞在時間はどれくらいだったか」「動画広告を見ているのか」といった、来場者の一連の行動を、定量的に把握できるようになります。
これにより、展示場運営会社様においてはデータを活用した施策の改善検討が可能となり、私たちギックスが掲げる「データインフォームドな判断(※)」のご支援につながると考えています。
(※) データインフォームド(Data-Informed):経験、勘、度胸などを踏まえた人間の判断を、データを用いることにより従来よりも論理的かつ合理的なものにアップグレードするという行動様式
― 行動データを取得するうえで、マイグルならではの工夫や仕組みはありますか?
マイグルで行うキャンペーンは、「来訪でスタンプが貯まる」「貯めたスタンプで抽選に参加してインセンティブを獲得する」「アンケート回答で特典がもらえる」といった、顧客がその場で“すぐ達成できる”ミッションの積み重ねです。
この「ゲーミフィケーション」という楽しみながら参加できる仕掛けにより、自然に行動データを蓄積できるだけでなく、「特典がもらえるなら、もうひとつモデルハウスに行ってみようかな」といった、顧客の行動変容にもつなげることができるのです。
― 現場での集客や回遊促進以外にも、活用できる場面はありますか?
はい。例えば、このような活用が可能です。
- モデルハウスの回遊状況データを利用したハウスメーカー各社との連携
来場者が「どのモデルハウスを」「どういった順番で」「何棟回ったか」といった情報をハウスメーカーにフィードバックすることで、各社の差別化や出展満足度向上に寄与できると考えます。
また、展示場運営会社とハウスメーカーがより一体となって、来場施策に取り組めるようになるでしょう。
- LINE公式アカウントと連携した継続的な顧客接点の創出
マイグルはLINE公式アカウントと連携させることが可能で、キャンペーン参加を通じてお友だち登録いただける仕組みです。
つまり、来場後にもLINEで情報発信を行うことで、接点を維持し、中長期で顧客育成を行うことができます。
例えば「多くのモデルハウスを回り、それぞれの滞在時間も長かった方」には、具体的な商談につながりそうなコンテンツを。「モデルハウスは見たけれど、数が少ない/滞在時間が短い」という方には、ライト層向けのコンテンツを―といった形で、顧客の温度感に合わせた適切なコミュニケーションを行うことで、販促や営業の効率化にもつながると考えています。
また、来場前の情報収集段階にいる方に対しても、お友だち登録につながるミッションを設けることで、展示場来場前からの顧客接点を獲得することが可能です。
- 広告効果検証への活用
オンライン広告から特設サイトに誘導し、展示場への来場意欲を喚起するようなアプローチにも対応しています。広告視聴データと、実際の来場データを組み合わせることで、来場前後の行動をオンライン・オフラインの一気通貫で可視化し、広告の効果検証にも活用いただけると考えています。
“データと人の力”で、よりよい家づくり体験を共に描く
―今後はどのような形で、マイグルの活用・支援を広げていきたいとお考えですか?
人口減少の影響もあり、展示場に限らず、住宅業界全体として「物件を購入する顧客の数」は減ってきています。また、ハウスメーカー各社では、営業担当ごとに追客の手法や接客スタイルが異なり、その結果、成果にばらつきが生じてしまうことも少なくありません。
マイグルは、こうした「個人の勘や経験に依存しがちな業務」に、顧客の行動データを掛け合わせることで「顧客理解」を深め、接客の質や成約率、売上の向上に貢献できると考えています。
実際に、現在導入いただいている施策においては、出展ハウスメーカー様から展示場運営会社様に対して、好評価や感謝の声が寄せられていると伺っています。
今後もこうした成功の循環を、住宅業界全体へと広げていきたいと考えています。
― 最後に、住宅展示場業界に携わる皆さまへメッセージをお願いします。
住宅展示場は、人生でも特に大きな買い物の入り口です。
だからこそ、来場者の皆様にとっては「楽しく」「安心できる」体験であること、出展するハウスメーカー様にとっては「成果につながる場」であること、そして運営企業の皆様にとっては「再現性のある成功パターンをつくれる場」であることが重要です。
マイグルは、そうした三者の「気持ちのよい家づくり体験」を支える存在でありたいと考えています。ぜひ一緒に、“データインフォームド”な展示場づくりを進めていけると嬉しいです。
※記載内容は2025年11月時点のものです








