昨日に引き続き、もう一冊ご紹介。今回は、サイバーエージェントの藤田さんの著書「勝負眼」です。本書は、創業初期の弊社を手厚くご支援いただいた大恩人にご紹介いただきまして、「ゴールデンウィークに読まねばならない書籍リスト」の最上位にリストアップされました。Yさん!ぼく、ちゃんと読みましたよ!

さて、それでは、本題です。
社長「藤田晋」の遺書として読むべき一冊
まず、初手から奮っています。藤田さんが麻雀好きというのはみなさんご存じかと思いますが、それについて
まず麻雀というゲームは世の中の縮図のようだ。常に「平等」な状態から始まる将棋と違って、麻雀ではこの世の中と同じで配牌からして不平等。それでも、良い配牌を得たヤツが勝つとも限らない。ツモを積み重ねていく中で、実力と努力で配牌をひっくり返すこともできる。
おお。すごい。そういわれるとその通りなんですが、その視点は無かった。それに続いて、
仕事も人生も運に左右されるが、最終的には努力を怠らなかった人が生き残っていく。経営者も短期的に運が良いだけでうまくいく人もいるけれど、調子に乗って本物の実力をつける努力を怠れば長くは続かない。その理由は運で勝っているにもかかわらず、それが自分の実力だと勘違いしてしまうから。勝てなくなってきたときに「本来の自分じゃない」と現実を受け入れられず、ズルズルと負けが込んでいってしまうのだ。
はい。何と言いますか、、、反省しかないです。
その後、麻雀で得た「リスクとリターンを天秤にかけつつ即断即決する能力」が、経営判断につながっているのだ、というお話に続くわけですが、ほんとに感服。この時点で、この本を読む価値があったなと思います。まだ、本文に入って4ページくらいなんですけども。
桜井章一さん主催の雀鬼会「牌の音」で、「どんな理不尽なことが起きても、すべて自分のせい」という姿勢を学んだとか、自分の基本スタイルは「歯を食いしばって耐える」だとか、麻雀は4人でやってるのだから4回に3回は防御のためにベタ降りしてもおかしくないのに毎回勝負するのは非合理だとか、麻雀哲学の皮をかぶった経営哲学を滔々と語り続けてくれます。大量に引用したくなるのですが、とりあえず、読んでください。まぢで。
その他にも、
- コスト低減と言うとやり玉にあがる接待交際費はせいぜい5万10万の話だが、赤字事業をダラダラ続けると、数百万・数千万・数億円という赤字が毎月積み上がる。撤退こそがコスト削減の本丸
- 先手必勝でリソースを用意する。特に金。後手に回るとツラくなる
- 事業撤退ラインや若手の抜擢を「ルール化」「システム化」しておくことで、問答無用で物事が進む
などなど、そのまま経営ルールとして使えるノウハウも盛りだくさんです。
さらには、顔採用はしていないとか、会食の3分の1は社内会食だとか、GMO熊谷社長にワインをご馳走になりまくったのでGMOのことを悪く言えずついつい擁護してしまいそうになるのはワイン外交の成果だとか、行きたくもないのに「今度飯でも」とか言うなとか、8月は会食を一切入れないとか、一番会食に行っているのは幻冬舎の見城徹社長だとか、その見城さんは大事な会食の予約は秘書に任せず自分でやるとか、ChatGPTに健康相談をしているとか、出資してくれたUSENの宇野さんに「馬とフェラーリを買わなければ好きにしていいよ」と言われたとか。本書のベースが週刊文春での連載なこともあって内容もライトで読みやすく、ボリュームも軽いし語り口も軽妙。藤田さんの人となりを知れた気持ちになれます。
また、上場後にネットバブルが弾けて株価が公開価格の10分の1まで暴落して株主総会が大荒れになった話とか、村上ファンドとのやり取りの話とか、株主名簿に新興宗教法人が登場してIR取材の名目で面会して宗教勧誘をされた話とか、他人事として読めば笑い話だが、当人の立場を考えると笑えないエピソードも沢山ある。
そんな中で、とても響いたことが2つありましたので、そのお話を少々。
ひとつめが、「集団運」の話。ドン・キホーテ(PPIH)の安田会長の言葉らしいが、「組織の空気感・環境」を良い方向に持って行くと、全体として運気が上がるというお話。サイバーエージェントは、キラキラ系と評されていた(る?)が、藤田さんが意図的に、社内イベントやポスター掲示、大型受注の際には全社メールで伝えるなど、意図的に空気感をコントロールしていたのは驚きだった。あのキラキラ感は、作られていたんだ。
ふたつめが「蛮勇を嫌う」という話。トランプさんに石破総理(当時)が「なめられてたまるか!」と発言したことを引き合いに、「勝てない喧嘩をするのは蛮勇だ」と主張されている。本書を読むまで、僕は、藤田さんは「危ない橋を渡って勝ち続けてきた人」なのだと思っていたので、この話だけを読んだら「え、まぢで?」という感想を抱いていただろう。ただ、本書の中で一貫して語られる「リスクとリターンを冷静に見極める」「勝てない時はベタ降りする」という麻雀哲学を知った今は、とても納得感がある。引用します。
会社が小さい頃は特に大変だったけど、大企業からの横暴には耐え忍び、時に嫌な相手には自ら近づき懐柔してなんとかやってきた。だから、勝てない相手に無謀な言動に出る、「蛮勇」タイプのリーダーを見ると、私は苛立ちを感じてしまう。一見、理想や正義を掲げているように見え、その実、見栄や自尊心に囚われ全体利益を損なっていると思う。
ああ、凄い人だなぁ。この人は、勝負師だが、本書のタイトル通り「『押し引き』を見極める思考と技術|勝負眼(しょうぶがん)」の持ち主なのだ。
そんな藤田さんは2026年に会長職に退くのだそうだ。そういう意味では、この本は、藤田さんの「社長」としての“遺書”に近いのかもしれない。激動のネットバブルの荒波を乗り越えて、アメブロや町田ゼルビアのマネジメントメンバーを一掃して自分で立て直したり、AbemaTVやウマ娘を成功に導いたのは、運だけではなく、その考え方・哲学に依るところが大きいのだと思う。
あまりに面白く、そしてさらっと読めるので、あっという間に読み終えてしまったが、どこかで腰を据えて、しっかり再読したいなと思う一冊でした。







