データ分析の「ミスを防ぐ」ために:ミスプリベンション in データ分析(1)

AUTHOR :   ギックス

「ミスに気が付く」分析とは

データ分析におけるミス防止とは

データ分析というと、どうしてもデータをハンドリングする為のソフトウェアの使い方やハードウェアの構築の仕方、分析の時に用いる数式理論(デシル分析など)や統計理論(クラスタリングやディシジョンツリーなど)の話に耳目がひかれがちです。しかし、実は本当に大切かつデータ分析を行う上で最初にしっかりと身に着けておいて欲しいことは「ミスに気が付く」ということです。
世の中には数多くの“分析本”があふれていますが、その多くはドリル形式などでツールの使い方が書かれているものや、辞典的に数式・関数などが網羅されているものがほとんどで、分析業務を語る上でまず、最初にしっかりと理解しておくべき「データ分析におけるミス防止」に関して書かれた書物はほとんど見かけることはありません。(ミスについては「ミスをしないように注意しましょう」などとかわいいイラストと共に書かれている程度です)
そこで、本連載では、データ分析の基礎のキソ「ミスに気が付く」分析とはどのようなものかについて話していきたいと思います。

ありがちな日常

ありがちな話(その1)

上司A「先月のうちのスーパーの売上データを商品別に見たいんだけど、分析して出せる?」
部下B「はい。できます。もう一度データベースから抜き出して、切り口を変えて分析します」
上司A「え?商品軸を分析に加えるだけなのに、なんでそんなに大変なの?」
部下B「・・・今の分析では商品軸をデータベースから抜き出さなかったのです」
上司A「・・・」

ありがちな話(その2)

上司A「この前まで、作成していてもらったデータ分析のファイルを君の同僚のCくんに引き継いでおいてくれたまえ」
部下B「あ、いやちょっと難しいです」
上司A「ん?なぜだね?」
部下B「急いでいたので、自分しか分からない、参照先やグラフをその都度作ってデータ構造に混ぜてしまっているので、引き継いでもCさんがどこになにがあるのかわかるかどうか・・」
上司A「・・・」

ありがちな話(その3)

上司A「どうして4月と5月のうちのクレジットカード会員数がほぼ同じなのに、男性、女性で分けた会員数を足し合わせると、その数が合わないのだ?」
部下B「すいません。計算の参照範囲を間違ってました」
上司「・・・」

この連載でお伝えしたいのは、ミスプリベンション=ミスしても気付く仕組み作り

さて、よく耳にしそうな、話を3つほど上げてみました。(あなたの周りでも、よく聞きませんか?)
よく聞く話の中で部下Bくんには何が足りなかったのでしょう。技術的なスキルでしょうか。それとも責任感でしょうか。
一通り分析が出来ているということは、技術的に数式が分からないやツールの使い方が分からないというわけではなさそうです。また、上司とのやり取りを聞いても責任感がないというわけでもなさそうです。
 
実は、昔からよく言われている「仕事をしながら身に着けろ」では「データ分析の基礎思想」は身に着け難いと考えています。責任感や死ぬ気で分析をいくら行ってもミスを起こさないということはないということを理解してください。
(しかしこれは仕方のない話ではあります。決して部下Bくんは責められることはないのです。というのも、新人研修や社内研修、社外研修などで仮にデータ分析講座のようなものを受講していても、ミスを防ぐ仕組みに関する部分の説明は、世の“分析本”と同様になされないことが多いのです。)
この連載でお伝えしていきたいのは、テクニック論や精神論ではなく、データ分析を行っていく上での基本お作法としての、「型」を理解し、身に着けていくための考え方になります。つまりこの連載で言う、ミスプリベンションとは「ミスをしても気が付く仕組み」を作るということです。
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それでは、次回以降、「なぜミスは起きるのか」「ミスをしても気が付く仕組み」、そして「どのようにミスに気が付く仕組みを作り上げていけばよいのか」について説明していきたいと思います。
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