それぞれの“前提”の数字をどう決めるのか:分析とビジネスケース作成の深イイ関係(5)

AUTHOR :   ギックス

仮定を置いたら根拠を置く

ビジネスケースはすべてが想像の創造物なのは、誰しもが知っていることです。ただその想像も仮説の裏付けがあり、根拠がきちんと示されていることで、予測になり、ビジネスケースと言えるものに昇華されていきます。それほどまでに仮説が大切であり、どれだけもっともらしく、多くの人が納得できる根拠が用意されているかが重要になります。
ビジネスケースが考え込まれたものが、株式の目論見書(プロスペクタス)です。(ビジネスケースを作れるようになりたいと思う人は一度でいいので、優れた企業の目論見書をネットで探して見てみて下さい。)目論見書においては、その会社の未来予測が書いてあるのですが、売上の計画の項の倍の分量を使って、市場や経営環境の予測とリスクが明記されています。まるで事前に失敗した時の言い訳を書いてあるようにも思える部分もありますが、すべての数字にちゃんと根拠づけがされており、その仮説に基づいてケースが作られているのです。
皆さんもケースを作っていくうえで、どうしてもわからない数字も出てくることだと思います。その場合でも、必ず根拠ある仮定を用意しておいてください。なんとなくで決めた数字はビジネスケース上での落とし穴になるばかりか、往々にしてそのポイントが事業の失敗ポイントになることもあるからです。
 

キードライバーを探せ

ビジネスケースの枠ができたら、収支に影響を与えそうな数字を少しづつ変えながら、変化を確認します。この作業をシナリオつくりとも言い、もっとも楽観的な数字で構成されたものと悲観的な数字で構成されたものなど、複数のシナリオを作り上げておきます。このように将来へのシナリオを複数パターンつくるようエクセルを組み立てて、それぞれの数字を変化させているうちに、おのずと、「おや、この数字を変えると計画が大きく変わるぞ」や「この数字は全体には全く影響がないな」などが見えてくると思います。
 

楽観ケースと悲観ケース

どの位まで楽観的でいいのかやどれほど悲観的に考えておけばいいのですかなどといった質問も受けることがあります。その場合、「楽観シナリオは強気で投資を繰り返した場合を考えてみて下さい。悲観シナリオはすべての打ち手が不発に終わって、撤退を判断するラインを考えてください」と伝えています。そうすれば立案されたビジネスケースは事業開始の判断だけでなく、事業がスタートした後の一つの指針として活用できることでしょう。
 
さて、いよいよ次回は最終回です。これまでの連載を踏まえても、ビジネスケースは全く作れそうもありませんという人は少ないと思います。最終回では、自身をもって「ビジネスケースを作れます!」というために必要な日々の過ごし方をお伝えしたいと思います。

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