一口に人流といっても大きく3種類。それぞれ目的に合わせて取得しよう:iBeaconデータ活用指南書(6)

AUTHOR :   ギックス

本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

重要なのは、「どの人流をどう追って、何をしたいのか」という問い

実は、本連載は「iBeaconデータ活用指南書」と銘を打っていますが、「iBeaconを使ったプロモーション配信」や「iBeaconを使った商品状況提供」ではなく、あくまでも「iBeaconによって収集したデータで人の流れ(=人流)を分析する」であり。その為の、データ活用指南であります。(より詳細は、第1回、iBeacon(アイ・ビーコン)データを経営に活用せよ!:iBeaconデータ活用指南書(1)ご参照ください)
その視点に立った時に重要なのは、「どの人流をどう追って、何をしたいのか」という問いになると思います。
 

一口に人流分析(=購買行動分析)と言っても3つの大きさがある!

これまでiBeaconの話を中心に人の流れをどう分析していくのかということをお話してきましたが、人の流れ(=顧客の購買行動)という意味では、当然ながら、1)どこからそのお店に来て、2)そのお店の中をどう動いて、3)その売場で何を手に取ったのかという3段階があります。
それぞれに向いているデバイスがあり、それぞれのデバイスでも良し悪しがあることになります。しかし、一つだけ言えることは、すべてをカバーできるデバイスは今のところ登場していないことだけは事実で、必然的に使い分けていくしかありません。ibeacon1

店外行動に強いGPS、GIS

店外の行動で「AさんがB駅からC駅に行ってD店とE店に行った」などという情報を取れるのは今のところGPSであり、その機能を搭載した携帯電話となります。犯罪捜査などで「行方不明者(または容疑者など)の携帯電話の信号がXX市を最後に途絶えています」
という報道などを耳にしたこともあるかと思います。携帯電話のGPSを活用している行動ログ分析は多くの企業がやっており、他にもカーナビのGPSデータを用いている例などもあります。

[電通、ゼンリンデータコム]携帯GPSのビッグデータ基に顧客導線を徹底分析

前輪
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130228/459742/

 
他にもクレジットカードの利用履歴や電子マネーの利用履歴などから、人の店外行動を追いかけることは可能です。
では、小売業の持つ顧客行動の店外行動が見えるデータとしては、何があるでしょうか。もしFrequent Shopper Program(FSP)を導入していて、顧客住所データも入手している場合であれば、GISに自社カード会員の居住地をプロットすることが出来ます。

地図を利用した地域統計・調査・解析に!GISツール「AddLook®」空間解析http://www.hitachi-ics.co.jp/product/virtown/gis/addlook.html

 

店内行動に強いWiFi、Bluetooth、Camera

店舗や施設の中になってしまうとGPSも捉えづらくなります。(天井があることと、1,2mの移動を追いかけるのはGPSは不向き)そこで、強みを発揮するのは店舗・施設内で完結する電波になります。計測対象である顧客が電波をやり取りする機器を持っていることが条件になりますが、事前に機器のセット(もしくはアプリのインストール)が出来ていれば、WifiやBluetoothの範囲内に入るだけで、自動的に移動を追いかけ、データを取得できます。また計測対象側の顧客が機器を持って移動することによりBeacon01からBeacon02にある顧客が移動してきたということも分かります。最大の弱点である、「計測機器を持つ」ということさえクリアできれば、店内購買行動の測定デバイスの王者となれるでしょう。
一味違うのが、Camera画像による人流計測です。Cameraの場合は計測対象が何も持っていなくても画角内に入れば、その動きを追いかけることが出来ます。しかしながら、Camera01からCamara02へと顧客が移動しても、同じ顧客であるかどうかは現在の技術では安価にはできないという弱点も有しております。(また、Camaraを新設する費用はBeaconやWifiの設置費用に比べると大幅に高額です)
 

売場での行動につよいCamera

しかしながら、Camara画像の画像解析については、日に日に進化を遂げており、顧客の性年代が画像からデータとして計測出来たり、顧客がどの商品に興味を示したかなどもわかるようなデバイス・画像分析も登場し始めています。

画像解析によるO2Oマーケティング支援を行うABEJAあべじゃhttp://thebridge.jp/2014/12/abeja-salesforce-founding

店舗を訪れる顧客の行動をカメラで観察し、売り場作りや商圏分析に生かす実験を始めている。マーケティング用カメラで来店客の性別や年代を識別したり、店内での行動を追いかけて、品ぞろえやレイアウト、動線の変更などに役立てる狙いがある

コンビニの天井やレジに「顧客分析用カメラ」、売り場は変わるのか
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20140519/557622/?bpnet
 
これらは現在、日進月歩の勢いで進化している機会学習が調査員を代替する日もそう遠くないことでしょう。
 

多種多様なデバイスがあるが、どれを選ぶべきなのか?

ここでようやく最初に書いてあったことをもう一度、思い出してください。
“重要なのは、「どの人流をどう追って、何をしたいのか」という問いになる”とお伝えしました。ここまで紹介した通り、多種多様な場面で多様な手段で行動を追うことが出来ますが、ちゃんと考えてから取り組まないと行く当てのない旅路を彷徨うことになってしまいます。次回は、どのようにちゃんと考えていくのかをお話ししたいと思います。(つづく)
【連載記事:iBeacon指南書】
第1回:iBeacon(アイ・ビーコン)データを経営に活用せよ!
第2回:人の流れのデータ取得の歴史とデバイスの進化
第3回:iBeaconを人流データ取得デバイスとして使う為に乗り越えるべき壁
第4回:iBeaconの最大の強み「安い」ことを活用する
第5回:大切なのは“精度検証”と“Beacon間の計測差”を整えること
第6回:一口に人流といっても大きく3種類。それぞれ目的に合わせて取得しよう (本稿)
第7回:結局、大事なのは「人流分析して何をしたいのか?」という問い
第8回:するべきなのは「人流分析」なのか?
第9回:日米での人流解析の違いが面白い
第10回:gridならヒートマップもアナリティクスも提供!

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