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アクセンチュア関一則氏対談④:「Direct to Consumer」の潮流 〜デジタルマーケティングの前に知っておくべきこと~

AUTHOR :  網野 知博

アクセンチュア製造・流通本部で一般消費財・サービス業界グループの統括リードを務められている関一則さん。営業・マーケティング領域を中心に、戦略策定から業務設計・システム化・変革実行推進まで、一気通貫でのCRM改革支援に対して非常に豊富な経験をお持ちです。本日は関さんにデジタルマーケティングに関してお話を伺ってまいりました。

第4回:デジタル・ダイレクト・マーケティング&セールス

網野:

私がアクセンチュアを辞める少し前のことなので2010年くらいだと記憶していますが、その当時に関さんがDDMS(デジタル・ダイレクト・マーケティング&セールス)と言うキーワードを出していました。デジタル化された世界で、ダイレクトにコンシューマーにつながる。そして、セールスの前にマーケティング活動があるからこそ、マーケティング&セールスの順番になるというコンセプトであったと記憶しております。今までご説明いただいたようなデジタルマーケティングに関しては、このDDMSの進化版であると理解すればいいでしょうか。

関:

そうですね。ちなみにDDMSという略語にして騒いでいたのは網野さんだからね、覚えてないかもしれないですけど。笑

当時を思い出すと、「デジタル」に「ダイレクト」というキーワードがセットで入っているべきだと思っていたのですよ。そして、当時はわりとeコマースも意識していたのだけど、せっかくマーケティングを行うなら、そのままの流れで物が買える場が必要で、それがECサイトであり、そして「マーケティング」&「セールス」という言葉につながっていったのです。今改めて振り返ると、当時からの進化としては「セールス」の部分は小さくなり、かつ手段としての「デジタル」も小さいイメージなのかもしれないですね。

網野:

なるほど。株の投資でも、頭と尻尾は捨てておけというのがありますが、DDMSも頭と尻尾は弱めで、胴体のDMが主役であるという感じでしょうか。あえて今訳すと、「dDMs」ですね。笑

関:

そうだね。笑
ここまでの話をつなげていくと、ソーシャルネットワークとスマートフォンの掛けあわせで消費者の口コミがあるからこそ、消費者の心をつかんだ時の企業にもたらす価値が大きくなったのです。そして、消費者の心をつかんだ時点で、それがすぐに指名買いに発展する可能性が高いのです。そして、感動できる商品は得てしてニッチなものであることが多いから、そこに今度はビジネス上のテクニック論として、消費者にダイレクトに商品が直接届けられる(販売できる)仕組みが必要になるのです。
そして、Direct to Consumerの鍵はDirectであり、そのDirectはより「Direct with story」が重要ということです。素晴らしいストーリーによってリアルな体験をすることで、デジタルの世界のソーシャルメディアにも情報を発信してほしいという感じです。そうすれば黙っていても売れるという循環ができるのです。

「ダイレクト」「マーケティング」を太らせると、結果として出口の「セールス」を考えないともったいないからセットになるという感じですね。

網野:

当事者の発言なので多少ひいき目になりますが、今から考えると、4年前の時点で相当良い所まで思考が辿り着いていたのですね。笑
今振り返ると、ある意味もったいなかったですし、でも当時はここまでたどり着いても伝わらなかったかも知れませんが。

関:

私もこのコンセプトにおいてどちらかというとセールスに多少寄っていたのかもしれないですね。当時は話題性を作った事例の話とか、自分としても少しテクニック論の話を持って提案に行っていたかもしれません。でも、今は世の中にも多くの事例が出て、こちらも論理武装しやすくなりました。話題性を作ったデジタル系の事例とセットで本質を話すことにより、理論が伝わりやすくなったと思います。日本経済新聞の「経営書を読む」の連載を書くのに、コトラーの「コトラーのマーケティング3.0」を何度も繰返し読んだのですが、そこでも改めてテクニック論ではなく、心に響くようなストーリーを持った商品を売り込んでいくべきだという結論に至りました。例えば、プロシューマーという言葉がありますが、彼らを巻き込んで共創(コ・クリエーション)をやりましょうというのではなく、人に感動される体験を正しく発信していこうと言う部分が本質であり、そのための共創と言う手段なのだと思います。

網野:

今はこういった話をクライアントの企業の方々へお伝えしていると思いますが、反応はいかがでしょうか?

関:

本質は理解していただけるようになりました。まだ実行へのハードルはありますしこれは一筋縄では行きませんが、それでもそういった社会への適応は必須だと思います。それこそマズローの欲求5段階説じゃないけど、「人の役に立ちたい」と言う欲求が本格的に重要視されはじめましたよね。エコや皆の協力に基づく社会とか、そんな幸せな時代はかつてなかったわけですし、でもこれから10年かけて確実にそういう方向に向かっていくでしょうから。

網野:

そういった本質を理解することがビジネスを検討していく前提になりますね。

関:

アクセンチュアは「すべてのビジネスがデジタルになる」という表現をしているのですが、これは決してネットの世界に閉じた話ではありません。ネット以外も含めて圧倒的な技術進化が進む中で、そういったテクノロジーもうまく活用しつつ、ビヨンドマーケティングとしてビジネスを考える時代になったのだと思います。

網野:

何か分かりやすい事例などあれば教えていただけますか。

関:

私が好きな例としてはネスプレッソになります。もともとコーヒー豆を売っていたネスレがネスプレッソというマシーンを売ることにより、コーヒーのリフィルはECで売るようになり、するとそこから実需を直接取れるようになるからSCMへのデータ活用へ展開できるし、その顧客とのダイレクトな接点を使えば、商品開発そのものまで発展させることも可能になるかもしれません。そういったことまで広げて考えると、消費財メーカーが世に出すべきプロダクトは、今度どんどん変わってくるかも知れません。

さらに言えば、今までの発想にないプロダクトは、消費者に感動を与える可能性が高いわけです。そう考えると、全体のストーリーまで踏まえて、自社のバウンダリー外の商品開発までをも考える時代になったということです。

(次号に続きます)

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