”考え方”を考える|シンプルにする前に「文章化」しよう ~クリスタライズ(結晶化)の手順~

AUTHOR :  田中 耕比古

急がば回れ。まずは「文章」にするところから。

先日、サマライズとは「クリスタライズ(結晶化)」することである、とご紹介しましたが、今回は、その「クリスタライズの手順」について考察します。

クリスタライズする、とは

先ほどの記事内でも申し上げた通り、クリスタライズする、とは、物事を「具体性を残したまま、短い文章で表現する」ことです。

 具体性を残したまま文章を短くすること、これを、コンサル界隈では「クリスタライズ(結晶化)」と呼びます。

関連記事:サマライズとは「クリスタライズ(結晶化)」すること より

しかし、物事を簡潔に表現する、というのは非常に難しいことです。では、どうするべきか?

いきなり、短くしようとしない

とても簡単なことなのですが、最初のコツは「長文でいいから、一回書く」です。いきなり簡潔に表現しようとしない、という意識を持つことです。急がば回れです。

「文字化されていない思考」は、「思考」ではありません。以前、別の記事でも書きましたので、そちらから引用します。

尚、コンサル界隈ではきっと常識だと思うのですが、「書かれない思考は、思考ではない」です。(関連記事:プレゼンのコツ 資料に落とし込む)本書でも「メモ書きをしろ」「まずは書け」と繰り返し語られますが、「書く」ことは「考える」と同義と言っても過言ではないと思います。

「書く」ということは、思考を”具体化する”、”視覚化する”ということです。そして、それは思考を”客観視する”ことにつながります。主観的に物事を捉えているだけでは、思考が深まりません。ですので、本当に「深く考えたい」とあなたが願うのであれば、客観的に物事(や、自分の考え)を捉えることが重要です。(関連記事:ギックスの本棚/読むだけですっきりわかる国語読解力

関連記事:ギックスの本棚/ゼロ秒思考 より

文字として紙に落として、客観視することで、本質が見えてきます。こちらも、関連記事から引用しておきます。

【紙に書く】紙に書きましょう。書かれない思考は思考ではない、という名言を残した方が某コンサルファームにいらっしゃいましたが、これはまさしくその通りです。紙に書く、という行為は、まさに「言語化」「視覚化」しています。”頭の中にあるもの=主観的にこれかなと思っているもの”を、”紙に書いてあるもの=客観的にそこにあるもの”に変化させることができます。これにより、論理破綻をしていないか、欠落している情報は無いか、といったことを冷静に見やすくなります。尚、いきなりパワーポイントに向かう人も多かろうと思いますが、それはあまりお薦めできません。パワーポイントは「なんとなく整理された感じ」「それっぽい感じ」を醸し出してくれますので、考えをまとめるには不向きです。まず、紙に書き、それを客観的に評価してから、パワーポイントで資料化するのが正解です。

関連記事:プレゼンのコツ 資料に落とし込む より

大学受験のための小論文の練習とか、就活の自己PR文だったりとか、そういうときにも「しっかり長文で書いてから、最初の8割を捨てろ」みたいなテクニックがあったと思います。結局は同じことですね。要するに、言いたいことが正確に伝わる文章にする”努力”をするのです。

要するに「走る(簡潔に表現する)」前に「歩く(長くていいから文書化する)」ことから始めよう、ってことです。

一番大切なのは「本当に言いたいこと」を先に決めること

この「長文で良いから紙に書く」という手順を、いざやってみようとすると、「意外と書けない」という人が多いです。ええ、そうなんです。多くの場合、問題の本質は「簡潔に表現する能力の無さ」ではありません。「言いたいことが決まっていない」ことにあります。

「短く表現する」どころか「長い文章でも表現できない」ということに気づく、これが、真の意味での”最初の一歩”です。先ほどの例でいえば「走る(簡潔に表現する)」前に「歩く(長くていいから文書化する)」のさらに前に「立つ(言いたいことを決める)」というステップがあるわけです。ここからはじめましょう。

実際、これはコンサルあるある過ぎて困る話なのですけれど、「端的に表現できない」という人と話していると、実は「まとめる能力がない」のではなくて、「そもそも、言いたいことが自分自身で良くわかってなかった」という状態だったりするんですよね。ほんとに。(尚、これは、その人の頭が悪いとか、そういうこととはまた別のお話です。「モノゴトを体系的に整理する」という訓練が圧倒的に不足しているだけです。)

この状況を打破しようとすると、まぁ、ニワトリかタマゴかという話になってしまうわけですが、とりあえず、日々「冗長でも構わないから、文章で言いたいことを徹底的に表現する」ということに注力していくことしかないでしょうね。

「語彙の足りなさ」は、読書で克服

この「言いたいことを考えて、長文で表現してから、文章を短くする」というステップを踏んでいった場合に、最後に残る課題は「ぴったりくる表現がみつからない」です。

これは、物事を体系的・構造的に考えるという能力とも直接は関係しませんし、本質を見抜く・エッセンスだけに絞り込む力とも直結はしないです。(もちろん、一部、関連はします。)体系的・構造的に考える、あるいは、本質を見抜く・エッセンスだけに絞り込む、という能力が、コンピュータで例えるとプログラムとしての優劣であるのに対して、この「ぴったりくる表現をみつけられない」のは、ハードディスク/メモリなどの記憶媒体の”中身”の問題です。(記憶”容量”の問題ではありません。)

単に、”過去の蓄積”が不足しているわけです。

以前から、「センス」とは、(知識+経験)×(知恵+想像力) だと申し上げていますが、その左辺である(知識+経験)が足りないのは、正直言って「努力不足」以外の何物でもありません。

the_sense

この状況を打破する近道は、とにかく、本を読むしかありません。これまで読んでなかったことを悔やんでも仕方ないので、事実を事実として受け止めて、1日1冊読むくらいの覚悟で、とにかく読み耽りましょう。50冊も読めば、世界が変わります。

そして、本を読むたびに、まとめる努力をしましょう。語彙の蓄積と、まとめるためのスキルが同時に身に付きますので、非常に良い訓練になると思いますよ。(詳しくは、サマライズとは「クリスタライズ(結晶化)」すること をご参照ください)

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