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第5章:「バランス・スコアカードの導入インパクト」”ツールとしての価値”ではなく”考え方”が鍵なんです|ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文/ギックスの本棚

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古

別に”思想”は古くはなっていないのです。

ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文―世界の経営者が愛読する

本日は、「バランス・スコアカードの導入インパクト(1993年発表)|ページ数:23p」をご紹介します。

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バランス・スコアカードの考え方

この論文では、バランス・スコアカードの内容についてはあまり触れてくれません。それは、この論文の位置づけが「1992年に初めて提唱された概念であるバランス・スコアカードを、早々に導入したフロントランナー3社(ロックウォーター、アップル、AMD)の状況を1993年に(つまり、提唱後たった1年だけ経過したタイミングで)発表した中間活動報告書」だからです。(参考情報サイト:Diamond HBR Library

ただ、予備知識なしにこの論文を読んでも、いまいちしっくりこないと思いますので、ここで、簡単に解説しておきます。(詳細は、専門書を読んで下さい)

バランス・スコアカードとは

「バランス・スコアカード」は、「バランス・スコアカード」あるいは「BSC」という表記をされることがあります。スコアカードは”採点表”と訳せます。その”採点表”がbalancedだ=バランスがとれている、ということなので ”全体最適視点での採点表”という感じになるんですかね。つまり、ビジネスの状況をしっかり採点する、ということで理解しておけば大丈夫だと思います。

当記事では、この論文の記述と合わせるために「バランス・スコアカード」で統一します。(世の中的には、バランス・スコアカード という表記の方が多いように思います)

基本的な考え方

”超”基本的な考え方としては、従来の財務指標のみに頼った業務評価に「視点」を新たに加えよう、というものです。

こういう戦略コンセプトの概念を「端的且つ正確に」表現したいときには、三谷宏治氏の「経営戦略全史」がめちゃめちゃ便利ですので、そちらから引用します。

「財務の視点(過去)」だけでなく、「顧客の視点(外部)」「内部業務プロセスの視点(内部)」「イノベーションと学習の視点(将来)」の4つの視点で企業の経営を評価しようとする枠組みでした。

出所:経営戦略全史

くどいようですが

  • 財務の視点
  • 顧客の視点
  • 内部業務プロセスの視点
  • イノベーションと学習の視点

の「4つの視点」で評価していこうということです。この「4つの視点」が提唱された価値を、三谷氏は、経営戦略全史の中でこのようにまとめました。

BSCは、財務指標一辺倒になりかかっていた1990年代のアメリカで、財務指標以外の視点を重視しようというフレームワークであり、斬新でもありました。

「財務(過去)偏重の経営を変える」「長期の戦略(未来)と今の活動(現在)をつなげる」ことを目指したキャプランたちの努力は評価され97年にはアメリカ企業の64%が、BSCのような「多面的な業績評価ツール」を採用している、と答えるまでになりました。

出所:経営戦略全史

本論文以降の発展

その後、「バランス・スコアカード」は進化していきます。この辺りについては、オージス総研の宗平氏の連載記事に詳しいので、ご参照ください。

オージス総研 > 技術開発活動 > Webマガジン 2010年7月~11月

とっても、ざっくり言うと

  • 最初(1992年)に発表された「バランス・スコアカード」は古い(指標間の関係性を記述するため、難易度が高く、微細な部分に落ちてしまいがち)
  • 第2世代(2000年ごろ)の「バランス・スコアカード」では”戦略マップ”のテンプレートが提供された。それにより、戦略→プロセス→人材・組織という流れができる。さらにそれを、全社→事業部→各部門→… と詳細化していくことも定義された(*)
  • 第3世代(2005年ごろ)になると、学習と成長の領域が深掘りされる。ビジネスプロセスをクラスターに分類し、それぞれの実現に向けた「レディネス(人的資本、情報資本、組織資本の”準備状況”)」は問題ないかを問う。そのレディネスのために、学習と成長が求められるという構図が定義された。

という感じです。当然ながら、1993年に発表された本論文「バランス・スコアカードの導入インパクト」は、第一世代に分類されます。

*:この考え方は、アクセンチュアがかつて提唱していたシックスバブルの概念にも通じますね。興味のある方はコチラをご参照ください。

じゃぁ、この論文は、もう古いの?

先ほどの、オージス総研の宗平氏の連載記事では、第一世代のバランス・スコアカードに対して、かなり辛辣な記述があります。

第一世代のBSCの特徴は、以下の図に示されます。もし、この図をまだ使っている人がいれば、非常に古いBSCです。直ちに使うのをやめて下さい。また、そのコンサルタントとは話をしない方が良いです。

第一世代のBSCの特徴
図1 第一世代のBSCの特徴

そんなに目の敵にしなくても・・・と思いますけれども、宗平氏の言うように、第一世代のバランス・スコアカードを軸に語られるこの論文は古くて使い途が無いのか?というと、そんなことはありません。まぁ、もしそうならば、BEST10論文に選ばれているハズがないですよね。

どういうことか。それは、三谷氏の書籍にもあった通り「財務=過去」の視点だけではなく、「現在と未来」に目を向けさせたところにあるわけです。要は「考え方・思想がそのものが、エポックメイキングだった」わけです。

という前提で、この論文を読み解いていこうと思います。(前段が、めちゃめちゃ長くなってしまいましたが、ようやく本題です)

本論文の主題は「導入企業の実例紹介」(1993年時点)

上述した通り、バランス・スコアカードによって、過去(財務)だけではなく、現在(プロセス&顧客)と未来(イノベーション)を”つないで”考えることができるようになったわけですので、フロントランナーとして挙げられた3社について、どのように過去 – 現在 – 未来をつないでいるかに注目していきます。それ以外の部分については、ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文 をご購入いただいて、お読みいただければと思います。

ロックウォーター:最高の成功事例

概況・狙い:

水中設備のエンジニアリングと、水中土木の世界トップレベル企業。高付加価値サービスへの転換を狙うに際して、バランス・スコアカードを導入した。

特徴:

ビジョンを描き、それを実現するための戦略を描いた。そして、その戦略を4つの視点(財務、顧客、社内プロセス、学習と成長)のそれぞれの戦略目標に分解した上でバランス・スコアカードに落とし込んだ。

変化のポイント:

特に、社内プロセスに関する評価指標によって、社内の意識変化が起こった。

以前のロックフォーターは、各事業部の業績に重点を置いていた。新しい視点では、評価指標の重点が、カギとなる業務プロセス同士を統合することに置かれた。プロジェクトの業績に関する実効性については、包括的かつタイムリーに指数化し、それを向上させていくことが同社の成功のカギを握るスキルと認識された。

最初に、大きなゴール=ビジョン・戦略を描いた上で「顧客の視点」「社内プロセスの視点」即ち現在の指標を設定し、それらを改善していくことを目指して「学習と成長の視点」即ち未来の指標を設定した。「財務の視点」=過去の指標は(言うまでもないことだが)それらの結果指標として達成されねばならないわけです。

これは、本論文におけるバランス・スコアカードの最高の成功事例として扱われています。

アップルコンピュータ:計画の立案支援として活用

概況・狙い:

事業部長が、粗利益率、自己資本利益率、市場シェアなどの従来の指標に注目している状況を打破すべく、バランス・スコアカードを導入。

特徴:

財務=株主価値、顧客=市場シェア・顧客満足、社内プロセス=競争優位、イノベーションと改善=社員の態度能力 をそれぞれの視点に対する指標として設定。管理を目的とせず、計画立案を目的としており、シニア・マネジャーを中心とする社員が、長期的な観点で”自分の活動”と”会社の業績”の関係性を見定めるように仕向けている。

変化のポイント:

各評価指標が、水平方向・垂直方向のどちらでも利用できるため、”作業”の職能全体への貢献をはかったり(垂直)、”組織(部門)”が評価指標に対してどれくらい貢献しているかをはかる(水平)ことができる。これが、シニア・マネジャー(および社員)の日々の活動の貢献度合いを正しく理解することにつながり、結果指標に過ぎなかった「粗利益率」「自己資本利益率」「市場シェア」のみならず、顧客満足や競争優位性、社員のモチベーションなどの現在・未来指標を意識させることができた。

AMD:既存の情報の統合

概況・狙い:

半導体メーカーAMDは、明快なビジョンと戦略を既に掲げており、また、それを管理するための情報システムを保有していた。これを、組織内により一層定着・浸透させるためにバランス・スコアカードを導入した。

特徴:

既存の指標に加えて、7つの視点(視点の例:顧客に関する指標=納期やリードタイムなど)を追加した。既存の情報システムにこれらを加えることで、計画や業績評価に関する長期トレンドを分析するための”戦略情報の貯蔵庫”として活用する。

変化のポイント:

バランス・スコアカード導入以前から、経営陣は半導体製造・流通にまつわる自社の評価指標を熟知しており、シニア・マネジャーたちはビジョンや戦略、評価指標の策定に着手していた。さらに、ライン・マネジャーも自分たちの業務への理解度が高かったため、バランス・スコアカードによって劇的な変化が起こったとは言い難い。(もちろん、情報の浸透に一定の効果はあった)

結論:バランス・スコアカードは「変革促進」に最も適している

この3社の状況を踏まえて、本論文では「バランス・スコアカードは、変革推進に最も適す」と結論付けられます。

また、バランス・スコアカードの「導入による変化」はもちろん注目に値するわけですが、それを維持するプロセスそのものに特筆すべき価値がありそうです。

「BSCによって、組織全体を通じて、大きな変化が起こり、従来以上に市場を意識できるようになりました。BSCは、我々の目的と、それを達成するために何が必要なのかについて、共通の理解を与えてくれたのです」

「BSCを導入した当初、目覚ましい変化がみられました。(中略)しかし、現在におけるBSCの意義は、何年もの間、社員たちと築き上げてきたプログラムを維持することにあります」

もちろん、業績に劇的な効果が表れるのは企業として最高の結果ですが、それを一過性のものとしないように「意識変化として定着化する」「継続的に管理運用する」ということが非常に重要ですし、バランス・スコアカードの考え方は、その役割を十分に果たしている、と考えられます。

雑感:ツールは進化する。思想は進化を方向付ける。

全てのツールは進化します。今回の例でいえば”戦略マップ”などは進化していくわけです。そのため、古いツールは、登場したタイミングでは正しかったとしても、どんどん時代遅れになっていきます。

しかし、思想は時代遅れにはなりません。思想は、ツールが進化する方向性を定義しているからです。「過去のみにとらわれず、現在・未来を”連続的に考える”」ということが大前提となって、より使いやすいツールはどういうものか?という発想が生まれるのです。

今回のバランス・スコアカードは「ツールとしては時代遅れ」な側面があるかもしれませんが、その根底を流れる思想は、20年を経ても、まだまだ現役バリバリだと言えるのではないでしょうか。

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