clock2014.02.09 10:00
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ギックスの本棚/プラットフォームビジネス最前線 26の分野を図解とデータで徹底解剖

AUTHOR :  網野 知博

プラットフォームビジネスを網羅的に知るための一冊

プラットフォームビジネス最前線 26の分野を図解とデータで徹底解剖

 最近巷では「このビジネス領域でプラットフォーム化を目指す」とか、「我々が目指すのはプラットフォームビジネスです」など良く聞くようになりました。なんとなく分かっているようなプラットフォームやプラットフォームビジネスと言う名称ですが、プラットフォームビジネスとはどういう物で、どんなタイプ分類があり、代表的な事例はどのようなものかを知る事ができる一冊です。

プラットフォームビジネスとは

 まずはプラットフォームビジネスとは何を指すのでしょうか。本書ではプラットフォームビジネスではないものから定義することで、プラットフォームビジネスの定義も行っています。
プラットフォームビジネスではない:
バリューチェーン構造の最終事業者が製品・サービスの選択肢を提示し、最終ユーザーはその選択肢の中から最終商品・サービスを選ぶ、最終的に選択肢を決めるのは製品・サービスの最終事業者
ではプラットフォームビジネスとはどのようなものでしょうか?
プラットフォームビジネス:
製品・サービスが組み合わせ可能。最終ユーザーは各レイヤーの製品・サービスを直接選択可能
アカデミックなプラットフォームビジネスの定義:
1. 製品の品質責任が「補完製品/サービス/情報」の提供者(補完プレイヤー)にある
2. 補完プレイヤーと消費者との間で取引契約がなされる
 消費者側、利用者側から見ると、プラットフォームを利用することは、最終ユーザーのOEM化であると捉えています。
 ここで言うOEMは、Original Equipment Manufacturerであり、自社製品を製造する事業者を意味しています。自動車業界でOEMと言えばトヨタや日産などを指し、Tier1と言えばアイシンやデンソーなどを指すのと同じ意味合いのOEMです。
 最終ユーザーが自分だけのためのオリジナルの商品を自らがモジュールなどを選択し、構築し、利用しているわけです。
Android携帯などはまさに典型例で、アプリケーション、Suica、idなどのおさいふケータイも自らが判断してインストールして一つの自分のオリジナル商品を構築していると考えられます。
 最終ユーザーのOEM化は既存のバリューチェーンを破壊する事も意味しています。今まではサプライヤーが直列につながり顧客に最終付加価値を提供していた形から、サプライヤーが並列に顧客につながる事を意味します。つまりは、最終ユーザーの価値創造の力量に応じて最終ユーザー自らが得られる価値も変動する事を意味します。こういった流れは、プロシューマー(Producer + Consumer)の台頭が進むとともに、一部の尖ったプロシューマーに対してそれらを摸倣するフォロワーが現れる事も想像できます。
 プラットフォームを活用したプロシューマーが新たなビジネスを展開する例も今後は多く見られるのではないでしょうか。3Dプリンタなどで個人が容易に物作りができる環境が揃った事もあわせてこのような流れが加速すると想定されます。

2つのプラットフォームビジネスの型と3つの収益モデル

そのプラットフォームビジネスですが、大きく2つの型があると説明されています。
1. 基盤型プラットフォーム ゲーム機とゲームソフトの関係
2. 媒介型プラットフォーム 予約サイト、比較サイト、コミュニティサイトなど
また、iphoneという基盤型プラットフォームにiTunesという媒介型プラットフォームが組合わさったハイブリット型も登場しています。
プラットフォーマーの収益モデルは3つあると言及されています。
1. 補完プレイヤーとユーザーを仲介する価値 仲介の手数料
2. 補完プレイヤーやユーザーをプラットフォームに参加させる価値 参加料
3. プラットフォームで得られた情報を第3者に提供する価値 データ・分析のサービス提供量
 マネタイズの仕方はこれらの3種類になりますが、実際はうまく組み合わせているケースが多いと思います。どちらにしても、マネタイズするには参加者数(利用者数)と言う観点でクリティカルマスを超える必要があります。
 GoogleにしてもYoutubeにしても、Facebookにしても、膨大な利用者を集めてからマネタイズのやり方を考えているため、一般的にはユーザーを集める事がこれらのビジネスの王道なのでしょうが、逆に言えばクリティカルマスを超えないと全くと言っていい程、収益にはつながらないという特徴を持っています。
Winner takes allの世界になりやすいののがプラットフォームビジネスの特徴と言えるでしょう。
 本書では26のプラットフォームビジネスについて事例紹介がなされています。
これらを把握して自らがプラットフォームを立ち上げてビジネスに参入するのも良いですし、既存のプラットフォームを活用してプラットフォームビジネスに参入するのも良いでしょう。また、これらのプラットフォームを活用して創造した商品やサービスでビジネスの展開も考えられます。また、我々は最終ユーザーでもあるため、こうしたプラットフォームを活用しながら、身近の生活をより便利にして行く事も考えられます。
 プラットフォームビジネスの事例の本としては非常に分かりやすくまとまっていますので、プラットフォームビジネスの全体像を網羅的に知りたい方々にはお勧めの一冊となります。

プラットフォームビジネス最前線 26の分野を図解とデータで徹底解剖
プラットフォームビジネス最前線 26の分野を図解とデータで徹底解剖

 

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