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第13回(最終回):小さなPD(CA)∞の事例を見る/「会社を強くするビッグデータ活用入門」を振り返る

AUTHOR :  網野 知博

私は2013年の11月下旬に著書「会社を強くするビッグデータ活用入門」を出版致しました。準実用書と言う位置づけで出版しており、商業的には成功も失敗もしていない予定通り淡々と細々と出荷されている本ですが、読んでもらう人を明確に定義したため、”読んで頂いた方からは”比較的好評を得ております。
そうした中で、この本を読んで頂いた読者、及びこのテーマに関したセミナーにご参加頂いた方からの質問などを整理する形で、対して売れていない自分の本を改めて振り返ってみよう、と言う企画でしたが、この”だらだら企画”もついに本日で最終回になります。
賢明な読者からは「え、まだ4章しか振り返っていないじゃないか?」と突っ込まれそうですが、実は6章以降で書いた「分析の実践」に関しては、データ分析担当の花谷が、リアルのPOSデータも提供しながら実際の分析を紹介していくことになっております。⇒こちら

会社を強くする  ビッグデータ活用入門  基本知識から分析の実践まで

ビューカード社の事例を見ながら小さなPD(CA)∞サイクルをご紹介

『大きなPDSサイクル/小さなPD(CA)∞サイクル』の全体像に関しては「大きなPDSと小さなPD(CA)∞サイクルって何?」を参照して頂ければと思います。

前回は小さなPD(CA)∞サイクルの肝は以下の4つと言う話と、それぞれに関して説明をしていきました。本日は具体的な事例も交えながら説明をしていきたいと思います。

  1. (CA)サイクルを回すに必要となるデータの取得方法
  2. 分析結果を見せていくための分析環境や分析結果を提供するツール
  3. 分析結果を見てアクションする役割や担当の設定
  4. 上位層までを含んだ意思決定や軌道修正を行える場(会議体)の設定

(CA)サイクルを回すに必要となるデータの取得方法

第11回の記事でオートチャージ利用者が優良顧客であれば、消費者もビューカード社もwin-winになれるため、「オートチャージ1st.」と言う大方針の上で施策を展開する事になるという話を書きました。では具体的に何を消費者に訴えて、消費者にどのような態度変容を促したいのでしょうか?

  • 新規入会時にオートチャージの良さを知ってもらい、ちゃんと設定をしてもらう取り組みをしよう。
  • 既存の会員でオートチャージ設定をしていない人にオートチャージの良さを知ってもらい、ちゃんとオートチャージ設定をしてもらう取り組みをしよう。
  • オートチャージを設定して使ってくれていない人にオートチャージの良さを知ってもらい、ちゃんと使ってもらえる働きかけをしよう。

おおまかに言えば上記の3つに収斂すると思います。まずは、これらに対して施策を検討し、また各施策の実施結果をタイムリーにモニタリングしてカイゼンしていくためにもデータというものが必要になります。

「入会時にオートチャージ設定をしてもらう取り組みをしよう。」と言う取り組みに対し、マスにいっぺんに「オートチャージ素敵よ!」と訴えるなら別に分析はいらないでしょうが、個別のセグメントに対して施策を考えて行きたい場合は現状を把握したくなります。すると、「入会チャネルごとに設定率は違うの?」「入会したカード種別ごとに設定率は違うの?」「性年代ごとに設定率は違うの?」となどなど知りたいことがどんどん出てきます。

同様に今オートチャージ設定をしていない既存会員に対して策を打ちたい場合も、今設定していないと言う状態がわかれば今設定していない人はどういう人かということを把握できます。また、既存会員向けの策まで考えるためには、「入会後にあとからオートチャージ設定をした人はどういう人なのか?」を把握したくなります。また、「オートチャージを設定していたが、途中から辞めてしまった人はどういう人か?」ということも知りたくなります。そのためには、現状の状態フラグだけでは足りなくて、いつ設定し、場合によってはいつ辞めて、いつ使ったのかと言うデータが欲しくなります。

その場合、個人IDに対してオートチャージ設定のオンオフのフラグだけをつけても、その断面でオンかオフかしかわかりません。それでは足りなくて、今回の場合では月次の頻度でオートチャージ設定の有無を2次属性データとして付与していかないと、途中から設定した、途中から解除したなどがわかりません。途中設定、もしくは途中解除と言うフラグだけなら、それだけを2次属性データとして顧客IDに付与することもできるでしょうが、それだとその設定したタイミング前後での「チャージ額の利用の変化は?」「クレジットカード全般に対する利用の変化は?」などを把握することができません。オートチャージ設定と言う2次属性データも月次で見たいとなると、クレジットカード利用のトランザクションデータと同様の扱いにしてしまうほうが自由に分析しやすくなるでしょう。そのような事を視野に入れながら、データの取得方法や分析の仕方、更に細かく言えば2次属性データの付与の仕方も含めて考えて行くのがStep1になります。

分析結果を見せていくための分析環境や分析結果を提供するツール

同時にどのくらいの頻度で分析結果を見ていくのかと言うことを決めます。そこから逆算して、データ取得頻度や分析頻度というものが決まってきます。このタイミングで分析の重さもハンドルすべきデータ量も自ずと見えてくので、最も効率的に、効果的に小さなCheck-Actを回してそのためにはどのようなツールや仕組みが必要であるかが自明になります。それがStep2になります。ビューカード社及び弊社がビューカード社の分析用に何を使っているかは詳細は企業秘密ということに致します。笑 と言うのは冗談ですが、日々進化や変化しているために、これを使ってやっていますと書きにくいということもあります。

分析結果を見てアクションする役割や担当の設定

新規入会時にオートチャージ設定をしてもらうと言う施策を動く際も、チャネルごとに担当が違う、提携カード毎に担当が違う、と言うのはよくあることです。新規入会者に対してオートチャージ設定率XX%を目指すと言う全体の目標を俯瞰しながらも、各人の役割や担当を設定し、進めて行くことになります。それがStep3になります。数字を「施策単位に意味のある単位」に分解出来ているということは、ある程度「論理的に構成されたロールが設定できる」ことを意味しますので、Step1やStep2を経てくると、役割分担は決めの問題で対処できます。後は、その各人が数字を見ながら進めることができるように、Step1,2で考えてきたデータやツールで問題ないかを確認します。ビューカード社の場合はあまり縦割り感やサイロ感がない企業なのであまり事例にならないので一般論で書きますが、各部署のポテンエラーや責任のなすりつけ合いは、最初に数字を分解してロールを決めていれば解消できることも多いのです。

上位層までを含んだ意思決定や軌道修正を行える場(会議体)の設定

各人の役割や担当が決まると、施策実行、そしてCheck-Actはある程度個別で走って行くことになります。とは言え、「全体の目標を俯瞰しながら」と言う事が必要になります。そのために、”常に全体の数字を見ながら”、また”各個別施策の間に数字的、もしくは施策的な齟齬がないか”を確認しながら進める事になります。そのように進めるためには全体の会議体が必要になることは自明だとご理解頂けると思います。

経験的に言えば、このような会議体は最初からセットしておくほうが円滑に進みます。「全体の目標を俯瞰しながら」とは言え、担当者が責任を負っているのは各人の役割ですので、全体との整合性を考えると会議体があったほうが合理的であるとは言われなくてもわかると思います。いわゆる横同士の連携と言う意味でも非常に有効なのですが、それ以上に重要なのは、実は小さなPD(CA)∞サイクルはそもそも大きなPlanの状況次第では変更になる可能性があるということです。小さなPD(CA)∞サイクルの結果から上位の大きなPlanに反映されることも当然ながらあります。会議体に関してはあまり具体的で生々しい内容は書けませんが、最上位の目標を持っているディシジョンメーカーだったら「決めの問題」で解消できることも、各担当だと「避けられない制約」になることがあるため、最上位の木曜を持っている上位層を含めた会議体にしないとせっかくのCheck-Actもタイタニックの椅子並べになるだけで終わってしまいます。

2015年1月時点において、弊社は株式会社ビューカード社に対して約1年半ほど、この『大きなPDSサイクル/小さなPD(CA)∞サイクル』をお手伝いさせて頂いておりますが、支援している我々自身もデータを皆の共通言語として打ち手の方向性を考え、また意思決定を行い、軌道修正を行うことは非常に価値がある取り組みであると痛感しています。価値があるという表現では弱く、経営を強化するために「絶対的に必要な取り組みである」と断言できます。

本書では、またこの連載記事の中でもデータがビッグでもリトルでも関係なく、どのように使うかが重要であると説いてきました。この連載の最終回をこのような「当たり前のデータ活用」で終えつつ、冒頭でも書きましたとおり、花谷にバトンを渡して、「当たり前分析」の実践編をリアルのPOSデータを使いながら紹介して行きますので、引き続きご愛読よろしくお願いします。

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