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「フルマネージド」クラウドサービス~第五回・クラウドサービスは「フルマネージド(Fully Managed)」へ~

AUTHOR :  岩谷 和男

「フルマネージド(Fully Managed)のクラウドサービス」これからの展望

これまで四回に渡って「フルマネージド(Fully Managed)のクラウドサービス」について書かせていただきました。前々回前回は「フルマネージドのアプリケーションサービス」について実例を挙げながらを説明しました。最終回である今回はこの「フルマネージドのクラウドサービス」がもたらすこれからの展望に思いをはせてみたいと考えています。

業務アプリケーションサービスを、フルマネージドのクラウドサービスだけを組み合わせて構築する

クラウドの登場前から現在までを振り返ってみると「一つの業務アプリケーションサービスを作るために必要なこと」は以下のように変遷してきたと感じます。

2005年ごろ:自前でサービス稼働環境(=ハードウェア)を用意していた時期:

  • 業務アプリケーションを作成
  • 自分でサービス稼働環境を調達(=ハードウェア調達)・構築
  • 自前で運用作業

2005~2010年ごろ:クラウド黎明期:

  • 業務アプリケーションを作成
  • クラウド上の仮想コンピュータサービスを利用してサービス稼働環境(業務アプリサーバ・DBサーバなど)を構築
  • 自前で運用作業

2011~2015年ごろ:フルマネージドのクラウドサービス普及期(おそらく今ここ):

  • 業務アプリケーションを作成
  • 業務アプリサーバはクラウド上の仮想コンピュータサービスを利用。データベース等はフルマネージドのクラウドサービスを利用
  • 業務アプリサーバに関しては自前で運用作業

これから:すべてをフルマネージドのクラウドサービスだけで作り上げる時期

近い将来、

  • 業務アプリケーションは定義体化される
  • 定義体はフルマネージドのクラウドサービスに格納される
  • 運用作業はほとんど発生しない。業務アプリ提供者はそのサービスの向上にのみ注力する

こんな時期が来るのかもしれません。前回Power BIの例を挙げましたが、実際Microsoft社はビッグデータ分析業務においてこれに近しい世界を作り上げようとしています。本執筆時(2015年5月)にはまだサービスの全容は公開されていませんが、かれらの描く青写真からは以下のようなメッセージが読み取れます。

[Microsoft社のサービス展開(筆者予想)]

  1. 外部からの素データ受け入れ窓口としてクラウドサービス「Cloud Storage」を利用する
  2. 上記a(=非定型および形式混在データ)の一次格納先としてクラウドサービス「Data Lake」を利用する
  3. 上記bの定型化およびデータのクレンジング処理としてクラウドサービス「HDInsight」を利用する
  4. 上記cで定型化されたデータの格納先(DWH)としてクラウドサービス「SQL Data Warehouse」を利用する
  5. 上記d(DWH)に格納されたデータを機械学習で処理する際にはクラウドサービス「Machine Learning」を利用する
  6. 上記d(DWH)から抽出・加工したデータの格納先(データマート)としてクラウドサービス「Power BI」を利用する
  7. 同じく「Power BI」の機能を利用して分析対象者(お客様)にすぐれたユーザインターフェースを提供する
  8. 上記を「一つの業務サービス」として提供する場合の「ユーザ管理機構」としてクラウドサービス「Azure AD」を利用する

これらのサービスはすべて「フルマネージドのクラウドサービス」です。上記a~gそれぞれの「業務アプリケーション」としての処理は各々のクラウドサービス上に「設定」もしくは「定義体」として格納されることが予想されます。

まとめ「フルマネージドのクラウドサービス」がもたらすもの

これは繰り返しになりますが「業務サービス提供者はそのサービスの向上にのみ注力する」という「より純粋なサービスへの取り組み」がサービス提供者の生死を分けると考えます。見方を変えれば「スタートの資本力」よりも「顧客嗜好のアイディア創出」や「アイディアをサービスに具現化するスピードや行動力」が重要視される時代になっていくのかもしれません。下克上・群雄割拠になっていくのでしょうか?またその先にあるのはWinner-take-allの格差拡大でしょうか?今この連載のまとめを書く中で近い未来への高揚感と焦燥感が入り混じっています。

以上、全5回で「フルマネージド(Fully Managed)のクラウドサービス」について書かせていただきました。ありがとうございました。

本連載について

 

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