CxOには2種類ある→経営課題解決の「出口」を自分で持つ”花形CxO”と、それを持たない”縁の下の力持ちCxO”|戦略用語を考える

AUTHOR :  田中 耕比古

花形か、縁の下か?

前回、CxOとは「経営課題に、自らのスペシャリティ”x”で取り組む人」というお話をしました。今回は、その上で、CxOには2種類ある、というお話です。

提案できる解決策が違う

CxOは、自分の専門領域=スペシャリティ”x”で、経営課題の解決に尽力するわけです。そうすると、自分の専門性によって、同じ課題に対しても提案できる解決策が変わってくるのは自明です。

例えば「商品ブランドの若返りを図るために投入した新商品の立ち上がりが悪い」という経営上の課題があったとします。さて、各CxOは何を提案するでしょう?

  • CMO(Marketing):スポットでのCM投下+交通広告で認知度向上と興味喚起を狙う
  • CSO(Sales):ローラー作戦を展開し、営業マンで小売の棚を押さえに行くことで、店頭欠品を無くし、且つ、店頭での非計画購買を喚起する
  • CIO(Information):部長級以上に提供している「リアルタイム在庫管理システム」の閲覧機能を、個別の営業マンの個人端末向けに開放する

こんな感じでしょうか。ここでお気づきかと思いますが「直接的な解決策」と「間接的な解決策」が混じっていますね。

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もちろん、課題の内容によって直接的な解決策を提案できる場合もあれば、間接的な解決策しか提案できない場合もあります。それが良いとか悪いとか言うことはまったくありません。ただ、ポイントは提案できる解決策が、「常に間接的」なCxOが存在する、ということです。

縁の下の力持ちCxO(略称:縁の下CxO)

この、常に間接的なCxOを、僕は ”縁の下の力持ちCxO” (略称:縁の下CxO)と名付けました。(対義語は、”花形CxO”だと思います)

”縁の下の力持ちCxO”は、CIO(Information)が代表的です。他にも、CAO(Chief Analytics Officer)もそうでしょうね。彼らは一部の例外的なケースを除いて、「直接的な解決」が提案できません。彼らが経営にインパクトを与えるために構築した「情報システム」や、実施した「データ分析」を、CMOやCSOなどの直接的手段を持っている”花形CxO”によって、ビジネス上のリアルなインパクトに変換してもらうことが必要です。

誰が、どっちなの?

CMOやCSOなどの極めて分かりやすい”花形CxO”は良いとして、CFOや、CTOなどはどちらとも言いがたいCxOですね。ただ、僕の定義では、(少なくとも現時点においては)資金調達などの財務戦略という「出口」を持つCFOは”花形”ですし、社内の開発体制を抜本的に改革する技術プラットフォームを確立して生産性を5倍とかに引き上げてしまうといった「出口」を持つCTOも”花形”です。同様に、サプライチェーン担当も、流通改革による店頭在庫切れを無くすなどの「出口」があるので”花形”ですね。

一方、人材の採用や組織構造を変えるCHO(Human Resource)は、縁の下の力持ちCxOです。

これを、僕の古巣であるアクセンチュアがかつて使っていたシックスバブルというフレームワーク(関連記事:シックスバブルとは)で考えてみましょう。

参考:シックスバブル図

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関連記事での解説では、「変革すべきはBehavior(振る舞い・行動)である」ということを述べましたが、今回の場合は「Business Processに直接インパクトを与えることができるのが”花形CxO”」ということになります。

一方、IT、Organization、Human Resources、引いては、Strategy Intentを司るCxOは、”縁の下の力持ちCxO”ということです。つまり、CIO、CAO、CHOに加えて、CSO(Strategy)も縁の下の力持ちです。

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目的は「全体最適」。自発的に攻めていく”縁の下の力持ち”であれ。

このように、ビジネスプロセスに直接インパクトを与えられる”花形CxO”と、その花形を支援する”縁の下の力持ちCxO”が存在するわけですが、どちらが偉いとかいうことはありません。彼らはすべからく「全体最適の視点」で相互に影響を与え合います。

特に、イメージがしにくいであろう(なんせ、僕が勝手に作った新しい概念ですし)”縁の下の力持ちCxO”について、この「全体最適の視点」を保持する際の留意点をまとめておきますね。

CIOは経営課題に対して、ITの視点で、何を行い、その結果、どういうビジネスプロセスにどんな影響を与えられるか(or 与える必要があるか)を考えます。あるいは、データ分析を司るCAOならば、経営課題の解決のために、社内外のどういうデータを用いれば、どのビジネスプロセスに影響を与えられるかを考えます。

但し、この”縁の下”の住人が、真に”縁の下の力持ち”として実力を発揮するためには、”花形”世界=ビジネスプロセスを見る際に、「与えられた経営課題に関わるビジネスプロセスにたいして(自領域でできる)最適な解を探す」のみならず、「自領域の状況から、花形領域が解決すべき課題は何かを定義する」ことが重要です。CxOすなわち「”x”領域におけるChief(最高の)Officer」は、与えられたことだけやってりゃいいわけがないです。自ら”自発的”に動くことが重要なのは、レイヤーや担当範囲は違えども、プロジェクトマネジャーと同じですよね。(関連記事:”傍観する作業者”は永遠に”プロマネ”になれない

以上、「CxOとは何か」についての考察でした。尚、今後もCAOやCHOといった最近生まれた概念については、個別に考察をしていこうと考えていますので、執筆時には是非ご一読いただければと思います。

※前回記事「CxOとは何か」をお読みでない方はコチラ。また、CMSO(Chief Marketing & Strategy Officer)に関してはコチラです。

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