オムニチャネル ~マルチチャネルとは何が違うのか~|基礎から学ぶマーケ用語

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
eyecatch_MarketingKnowledge

オムニ って聞いても良くわからんよね。

世の中には「マルチチャネル」という言葉が存在します。この言葉は、かなり以前から使われていますし、ある意味では手垢にまみれているように思います。

そんななか、昨今、「オムニチャネル」という言葉が盛んに使われています。「オムニ」とは韓国語でお母さん…ということではなく、英語の接頭語「Omni-」即ち「全ての・・・」ということを意味します。「マルチ/multi-」が「多くの・・・」であることを考えると、まるで”網羅性の違い”であるように見えますが、実際にそうなのでしょうか。

今回は、マルチチャネルとオムニチャネルに焦点を当てて、オムニチャネルという概念を掘り下げてみようと思います。

オムニチャネル=ありとあらゆるチャネルの統合?

Google先生に「オムニチャネル」という言葉を投げかけてみると、IT用語辞典バイナリのリンクが提案されます。定義を引用(抜粋)します。

オムニチャネル |別名:オムニチャンネルオムニチャネルリテイリング  【英】omni channel

オムニチャネルとは、実店舗やオンラインストアをはじめとするあらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合すること、および、そうした統合販売チャネルの構築によってどのような販売チャネルからも同じように商品を購入できる環境を実現することである。

オムニチャネルでは、実店舗、オンラインモールなどの通販サイト、自社サイト、テレビ通販、カタログ通販、ダイレクトメール、ソーシャルメディアなど、あらゆる顧客接点から同質の利便性で商品を注文・購入できるという点、および、ウェブ上で注文して店舗で受け取ったり店舗で在庫がなかった商品を即座にオンラインでの問い合わせで補ったりできるよう販路を融合する点、といった要素が含まれる。

インターネットやモバイル端末の普及により、消費者はいつでも、どこからでも買い物することが可能になった。そうした時代背景における新たな小売のあり方としてオムニチャネルの考え方が注目されているといえる。

オムニチャネルの「オムニ」とは「すべての」「あらゆる」という意味をもつ。いくつかの販路を組み合わせて提供する取り組みはマルチチャネルとも呼ばれるが、オムニチャネルはあり得る全ての販路を統合することに焦点が置かれている。

出所:IT用語辞典バイナリ

な、なるほど・・・って感じですが、正直よくわかりません。

具体的に考えてみよう(Tシャツ屋さんの例)

こういう「良くわかんない時」は、具体的な例にしてみるのが王道です。それにより、”なんとなくわかった感じ”で飲みこむのではなく、”何がわからないのか”をクリアにすることができます。

ここでは、Tシャツ屋さんを例にとってみましょう。

Tシャツを作って売る

1. 手売りしてみる

先日、スタートアップ界隈で有名な某K社さんが、Tシャツを作って関係者に配布してましたが、それに倣ってギックスでもTシャツを作ることにします。ただし、弊社の場合、広告宣伝費として落とせそうにないので、ちゃんと販売することとします。

とはいえ、物販が本業なわけでもないですし、とりあえず、「Tシャツ製作費」だけでコストが収まるように「手売り」とします。フリマとかに出かけて頑張ります。(人件費?それは、僕のボランタリーな活動という事で、平日夜と週末を充てることにしましょう)

Omni01

とりあえず、販売はスタートしました。これで「単一チャネル」は立ち上がったわけです。

2. ECサイトスタート

さて、フリマを一通り回ってみたところ、意外と売れ行きが好調でちょっと調子に乗ってきました。

商品も多色展開したり、長袖をデザインしたりしてみたい気持ちになってきたのでECサイトを立ち上げます。これで「マルチチャネル化」が進んだわけです。

Omni02

この時点では、業務プロセスも非常にシンプルです。オフィスの片隅のダンボールに入っているTシャツを、ECで受注したら袋詰めして発送し、対面販売時は鞄に入れて持っていって売れ残ったものは在庫に戻す、という感じです。

3. お店での取り扱い決定

ECサイトで楽しく売っていると、友人のツテで知り合ったアパレル販売店の方から「うちにも置いてみない?」とお声がかかりました。二つ返事でございます。1枚当たりの利益が減っちゃうとかそんな細かいことは良いんです。ぜひぜひ置いてくださいませ。ということになります。

いよいよ「マルチチャネル」になってきた感じです。でも、週末のフリマ行脚の旅は続きますし、ECサイトでも頑張っていきます。

Omni03

しかし、この状況がしばらく続くと、少し困ったことになってきます。

最大のポイントは「在庫の問題」です。アパレル店舗で取り扱ってもらうことになったため、そちらに在庫を渡すことになります。結果、店頭で「人気商品は品切れ」「不人気商品は在庫の山」となってしまいました。一方、ECサイトは客層が違うのか何なのかよくわかりませんが、店頭とは違う商品が人気だったりもします。在庫の偏在が招く機会損失、という教科書通りの課題ですね。

また、対面販売に行っている間に、ECサイトで受注がたくさん入ってしまったのに、対面販売でも同じ在庫を売ってしまったために、折角の受注をお断りすることも時々起ってしまいました。

さらに、売れ筋商品がチャネル別に違う理由も分かりました。オシャレなアパレルショップで売られている際には、他のブランドのパンツ等と組み合わせたディスプレイが功を奏し、思いの外「クール」だと思ってもらっていたのです。あらビックリ。

一方、対面販売(主にフリマ)で買ってくれる人と、ECサイトに来てくれる人も年齢層などが大きく異なるという事が分かりました。ですので、アパレルショップや対面販売でタグを見てECサイトに来てくれた人は、イメージと違う、といってブランドから離れて行ってしまっていたこともわかりました。センスの無さがそっちで露呈するとは・・・くぅー。

要するに、「在庫の偏在による機会損失」と「ブランドイメージの不統一による購買意欲のコントロールミス」が起こってしまったわけですね。

Omni05_2

そこで、オムニチャネルです

ここで、考えるべきことを整理してみましょう。

  1. 「在庫」がチャネルごとにバラバラになっているので機会ロスが激しい
  2. チャネルごとに「ブランドイメージ」も違うため、クロスチャネルでの販売が困難

1については、在庫の統合管理を上手く考えていく必要がありそうです。2については、自ブランドの立ち位置を冷静に見直してみる必要があるように思えます。

というわけで、大きく3つの施策を打ちます。

  • 在庫・流通網の統合を推し進める
  • ECサイトをリニューアルする
  • ECサイトへの導線を設計

Omni05

在庫・流通の統合

アパレルショップは直営店ではないので、陳列在庫まで完璧に管理することはできませんが、EC側で必要な在庫を随時引き取るオペレーションの追加をお願いし、快諾を得ました。代わりに、店頭にない色の商品が欲しい、というような場合には、店舗に個別配送することを条件として提示したのが効いたようです。

また、アパレルショップに在庫が無いものを「自宅配送してほしい」という要望がお客様からあった場合には、店舗から受注を受けてお客様に配送する流れも設計しました。(同様に、対面販売の場合も直送対応を追加しました)

ECサイトのリニューアル

それと並行して、ECサイトをリニューアルしました。アパレルショップにwebデザイナーを紹介してもらい、アパレルショップのお客様が観ても「違和感を感じない程度」のクールさを演出しました。同時に、対面販売時にも、自ブランドの位置づけが分かるような説明をすることで、ECサイトに来てもびっくりしないように布石を打つこととします。

また、在庫管理の仕組みも再構築し、アパレルショップの管理者および対面販売の担当者が、リアルタイムでEC在庫(=センター在庫)を仮押さえできる仕組みとしました。(もちろん、押さえた在庫のリリースもできます)

ECサイトへの導線

そして、最後に、ECサイトへの導線を設計します。

アパレルショップは販売代理店ですので、ECサイト経由で販売されても利益にならない、というところではありますが、ブランドタグに2次元バーコードを埋め込むことで良しとしました。ただ、店長さんと個人的に親しくなったこともあり「他の商品もあるからECサイト行ってみたらどうですか?」と言ってチラシを渡してくれることもあるようです。感謝。

対面販売においては、もっと露骨に「ECで買ってくれたらポイント貯まりますよ」と啓蒙活動を行い、さらに、その場で会員登録して購入してくれたお客さんにはノベルティもあげる、ということでECに誘導していくこととします。

 

これらの施策によって「あらゆる販路の統合」が進んだ=オムニチャネル化が進んだということが言えるでしょう。(もちろん、今後、さらに業容を拡大することになれば自社店舗を構えたり、海外向けに販売したりということになってくる可能性はありますので、”「あらゆる販路」を現時点で網羅できた”とは言えませんが)

顧客視点で考える ことが鍵

今回は、Tシャツを売る側、の視点で説明してきましたが、実際に業務を設計していく際には「顧客の視点」が重要です。(裏表の関係なので、今回の場合も考慮していないわけではありませんけれども)

例えば・・・

  • 店頭で「その色のTシャツはサイズが無い」と言われたときに、どういう選択肢があると嬉しいか?
  • 「デザインの種類」「サイズ」などは、オンラインで十分に伝わっているのか?
  • 会員登録をしなくても買える”店頭”、”対面”に行った時に、会員登録が必要な”Web”をすすめられたらどう思うか?
  • 新商品の情報は、どういう経路で渡されたら一番便利且つ買ってもいいな・”販売窓口(店頭・対面・Web)”に行ってもいいな と思うか?

などが顧客視点の例です。

これらの「顧客のウォンツ・ニーズ」をできるだけ汲み取った上で、さらに、自社の利益も最大化できるような形で「あらゆる販路(チャネル)の統合」を行うことができれば、まさに、理想的な”オムニチャネル”を実現できたと言えるのではないでしょうか。

※ 尚、今回のTシャツ販売は完全なるフィクションですが、僕がTシャツ販売に興味があるのは事実だったりします。あしからず。

関連記事:ニュースななめ斬りbyギックス/オムニチャネルの本質は、接客競争(日経デジタルマーケティング)

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