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会議室に革新を:企画のDI

AUTHOR :   ギックス

おさらい:2種類のDI推進

前々回、ご紹介した通り、DI(データインフォームド)を推進するにあたっては、大きく分けると「現場のDI」と「企画のDI」の2種類が存在します。

前回の「A. ”現場”に気付きを」に続き、本日は「B. ”企画”に気付きを」をご紹介します。

架空事例で知る「企画のDI」

前々回の記事では、以下の5つを「企画のDI」の例として挙げました。

  • 自社の営業担当者500名が、どの顧客を担当し、どれくらいの訪問頻度を目指すべきか
  • 代理店経由でアプローチする顧客と、自社リソースでアプローチする顧客を、どのように峻別するか
  • 在庫を、どの物流倉庫に、どの程度配置するのか
  • 売れ残り品の割引ルールは、どのタイミングでどの程度値下げをすべきか(あるいは、しないべきか)
  • 人員・組織の業績評価は、なにをKPIとして、どのタイミングで評価すべきか。給与等にはどう反映すべきか

前回の「現場のDI」と同様に、

この記事では、「仮に、上記のような身近な例を当社がプロジェクトとしてお受けしてDI推進を試みるとするならば、、、」という建付けで、DI推進の進め方や内容をご紹介していきます。なお、当社はクライアント企業のクリティカルな経営課題解決に関与する立場にあるため、守秘義務契約が存在しております。そのため、こうした場で実際のプロジェクトの内容をお話しすることは叶いません。あくまでも架空の事例をご紹介します。そのため、ここで記載する分析手法等についても、実際よりもシンプルなものに留まっている点もお含みおきいただければと思います。

本日は、「営業担当者」の架空事例をご紹介します。

例)B2B商材における営業担当者の最適配置

営業活動は、ありとあらゆる企業で行われています。B2Cもありますが、B2Bも非常に多いでしょう。一般的に「営業担当」が対応するのは、B2Bになります。もちろん、B2Cであっても、富裕層向け商材・サービスなどは、個人向け営業担当がつきますが、例外的なものと捉えてよいでしょう。むしろ、B2Cは省力化する方向にあり、ECチャネルなどへの変化が進んでいます。

B2B商材を販売する、という場合には、多くの場合、継続取引を考えることになります。一度売ったら終わり、ということではなく、相互に信頼関係を構築していきます。また、これは、初回取引のタイミングから発生します。多くの場合、高額だったり、発注ロット数が大きかったりしますので、ぱっと思いついて、サクッと発注する(契約する)ということになりにくいのです。

そのような事情に鑑みると、B2B商材における営業担当者は

  • 相手が、何が欲しいのかを見極める
  • いつごろ、どのタイミングで欲しいのかを理解する
  • どういうコンタクト方法・頻度・タイミングが求められているかを理解する

などを行う必要があると言えます。これらのことが、どの程度分かっているのか(最近はやりの表現で言えば、解像度が十分高いかどうか)が、営業活動の成否を分けます。

さらに、実際に、顧客にアプローチするという段階では、買いそうな顧客を見極める、ということが求められます。言い換えると「あったまってる人」を見つけ出す必要があります。すなわち、

  • 購買に至る直前に、どういうアクションが起こるか
  • そのアクションの前(数週間前?数カ月前?)に、何らかの予兆はあるか

というようなことを理解しておくべきでしょう。もちろん、反対に、離脱した顧客・他社に乗り換えてしまった顧客は、どういう行動(=離脱の予兆)をしていたかを分析するのも有用です。

このような、購買予兆、離脱予兆を分析していくにあたり、大きな傾向として

  • 季節性の有無
  • リピート需要の発生サイクル
  • 地域性(ニーズの違い、タイミングの違い)

なども把握しておく必要があります。それにより、大きな人員配置計画を調整しておくべきでしょう。

さらに、個々の顧客に対しては

  • 商品以外のサポートニーズ(事前情報の豊富さ、アフターフォローの手厚さ)
  • 求める連絡頻度(月1くらいが適切?もっと低い?高い?、頻度は低くて良いが問い合わせへの即応性を求める?)

などの点において明確な特徴がでます。それらに合わせて、「どのタイミングで、どういうアタックをすべきか」を考えていくべきでしょう。場合によっては、それぞれの顧客に関して「どういう営業担当者と相性が良いか」まで考慮に入れた方が良いケースもあります。

ここまでくると、顧客に対して「重要度」の概念を持ち込む必要があります。すべての顧客のすべての事情を考慮しながら、同じように手厚く対応するということは不可能だからです。もちろん多くの場合、各社それぞれの定義に従って「重要顧客」は定義されています。しかしながら、重要顧客が本当に収益貢献が高いのか、などという部分まで踏み込めていないケースも散見されます。何年も前に設定された閾値や、お付き合いの長さなどで「重要」と定義してしまっていたりします。それに対して

  • 収益貢献の高い顧客の特徴は何か(例:1回あたりロットの大きさ、紹介ルート …など)
  • そういう顧客に育つためのきっかけ・経路は何か(例:特定商品の購買有無、特定イベントへの参加 …など)

などをデータから検証していくことは、戦略検討上極めて有用です。そうすることで、RFM(Recency/Frequency/Monetary)などでの単純セグメンテーションだけでは見えなかった「重要顧客」「重要顧客予備軍」などをあぶりだすことが可能となります。

このような情報を基にして、「どのエリアに、どれくらいの営業人員を配置するのか」「どの営業担当者に、どの顧客を担当させるのか」「どういう基準で、各顧客へのアタック方法・アタックタイミングを見極めるか」などを決定していくのが、「企画のDI」の基本動作です。

なお、お気づきの通り、このような方針・戦略は、データから一位に導出されるものではありません。また、特定の分析手法によって、正解が出てくるというものでもありません。取り扱い商材の性質(耐久消費財かFMCGか、乗り換え容易性が高いか低いか、など)、組織・人材の制約(転勤不可、など)、顧客の種別(大手が多いか、中小企業が多いか、など)のような、各社各様の事情に鑑みながら、「何をもって ”重要顧客” と定義するか」「どういう予兆ならば、アクションに活かせるか」などを見極めていく必要があります。また、こういう企画系の業務は、一度決めたからそれでOKということにもなりにくい領域です。定期的・継続的に再検討を重ね、そのときそのときの状況に合わせて、より良い方針を導き出していく必要があります。

それを実現するための試行錯誤をクライアントと一体となって実施することが、この種のご支援において最も重要なポイントであり、また、当社が極めて得意とするところでもあります。

「企画のDI」の考え方

「企画のDI」は、少人数の人が試行錯誤を繰り返しながら考え続けることが主目的となるため、昨日ご紹介した「現場のDI」とは異なり、業務アプリなどをつくらずにtableauなどのBIツールでのデータ提供に留まることも多くあります。

検討を進める中で、新しいインプットデータを増やしたり、分析の粒度を変更したり、セグメンテーションの区分を切り替えたり、といったことも頻繁に起こるので、カッチリしたアプリケーションを作らない方が利便性が高いという側面が強いと言えます。(もちろん、必要があればアプリケーションを作ることもあります)

「現場のDI」「企画のDI」のどちらにせよ、当社のアプローチに大きな変化はありません。

データを用いない業務判断が存在しているのであれば、そこに「データ ”も” 用いる」思考スタイルを導入する。
既にデータを用いていた場合にも、タイムリーさや、分析のこまかさに課題があったり、データボリュームの問題でサンプルデータでの示唆導出に留まっているのであれば、そこに、判断・意思決定に活用すべきインプットを提供する。

そうすることで、クライアントの思考が、データインフォームドなものとなり、判断の精度が上がり、成功の確度が向上します。

データインフォームドの適用範囲は、非常に幅広く、どのような企業・組織においてもお役立ちできます。また、「判断」という、ビジネス上の成果につながりやすい領域をご支援することも、大きな特徴だといえるでしょう。

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