【「正しく失敗する技術」を考える】第1回:成長とは失敗しにくくなること

AUTHOR :  田中 耕比古

失敗≠悪。同じ失敗を繰り返す=最悪。

失敗してはいけない。と、言われても、失敗するときは失敗します。仕方ないんです。人間だもの。

失敗した!とひとことで言っても、ケアレスミスが問題だったのか、そもそも筋の悪い事業領域に踏み出したのか、自分たちのケイパビリティが足りなかったのか、想定よりも投資が嵩んで資金が枯渇したのか、などなど、いろいろな理由があるでしょう。それらをすべてひっくるめて「決して失敗してはいけない」というのは、あまりイケてるアドバイスだとは思えません。

しかし、すべての失敗に共通して言える大切なことがひとつあります。それは、「決して同じ失敗を繰り返してはいけないということです。

連敗しないアメフトチーム

世界最高のプロスポーツと謳われるアメリカンフットボールリーグNFL。最高の運動能力を持ったプレイヤーが集まり、しのぎを削るこの競技において「連敗しないチーム」があります。

ニューイングランド・ペイトリオッツ。天才QBトム・ブレイディを擁するこのチームが「連敗」を喫したのは、2010年~2018年の9シーズンで、たったの6回です。しかも、3連敗以上は一度もありません。

2013年、2014年は、レギュラーシーズン16試合中4敗と、彼らにしては「負けが多い」シーズンですが、連敗はゼロです。今シーズン(2018-19)も、非常に調子が良くないシーズンで、16試合中5敗と苦しみ、ペイトリオッツらしからぬ連敗を2回も経験するということもありましたが、本日、NFL史上最多タイとなる6度目のスーパーボウル制覇に至りました。すごい。トムブレイディすごい。

なぜ、ペイトリオッツは連敗しないのか。

ペイトリオッツは、なぜ連敗しないのでしょう? その理由は明快です。彼らは、「失敗に対する修正能力が極めて高い」のです。

ペイトリオッツに限らず、NFLのすべてのチームは、科学的に試合を分析し、試合中でも失敗がなぜ起こったのかを理解して対応します。そして、試合が終わると、すべてのプレイを振り返り、翌週の試合に向けて同じ失敗をしないようにチームを作り上げていくのです。(野球とは異なり同じ対戦相手と連戦することはありませんので、その対策も必要となるのは言うまでもありませんが)

そんなNFLのチームの中でも、ペイトリオッツは、より精緻に失敗を理解し、正しく対応することで連敗を防いでいるのです。

大切なのは「失敗を繰り返さない」こと

スポーツにおいても、仕事においても、日常の些細な出来事においても、「絶対に失敗しない」ということは不可能です。しかし、「失敗を繰り返さない」ことはできます。

当シリーズでは、失敗を繰り返さないために、“失敗から学ぶ”ということを技術として整理していくことを試みたいと思います。ここで解説する内容を実践することで「同じような失敗を繰り返さない」のみならず、「日々の経験からより多くを学びとる」ことの指針となれば、と思います。

正しく失敗する6つのSTEP

正しく失敗する、すなわち、失敗から学ぶためのプロセスは、大きくは3つ、細かくは6つに分解できます。

まず、最初に行うのは「自分なりのやり方を考えて、それに則って実行(試行)する」ということです。いわゆる、仮説思考というものと密接にリンクするポイントですね。

詳細プロセスに分解すると、
1.勝ちを定義する(どうなったら、勝ちなのか。どうなってほしいのか。を決めましょう)
2.勝ちに向かう道筋を決める(どのようなアプローチで、勝利を目指すのか。を決めましょう)
ということになります。

続いては、「自らの失敗を理解する」ことです。当然ながら、最初の試行が成功していれば、このステップは存在しません。

こちらも、詳細プロセスにしましょう。
3.失敗を認識する(失敗した、と自分で認識するところが出発点です)
4.なぜ失敗したのかを分析/理解する(当初の仮説と何が違ったのか、を考えます)

最後が、「学びを次に活かす」です。やりっぱなしで終わらない。次につなぐことが大切なのは前述のとおりです。

詳細プロセスは、
5.失敗の本質を見極め、成功のコツという概念に昇華する(概念化、です。具体的事象の本質を抜き出します)
6.概念を具体に落とし込んで、成功の確度を上げる(具体化、です。前回と全く同じ状況、はないので、実情に合わせて適切にカスタマイズする必要があります)
ということになるでしょう。 (※参考記事「抽象化と概念化を間違えない」)

次回以降、上記6つのステップについて解説を試みます。

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