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ギックスの本棚|日本の身体(内田樹 / 新潮社):身体の「使い方」を考え

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古

身体は”使い方”。頭は”考え方”。

日本の身体

本日は「日本の身体」をご紹介します。

”使い方”を考えることがスタートライン

これまで、弊社ブログにおける、いちカテゴリとして ”考え方”を考える と銘打った記事を60程度アップしてきました。このシリーズの名称は「周囲から、どれだけ『考えろ』と言われたって、考えられるようにはならない。大事なのは『どう考えるか?』を考えることだ。」という、僕の信条を込めて命名しました。

しかし、この説明では、いまひとつピンとこない、という方もいるようで、どうやって説明すべきなのか、日々思い悩んでいたところ、友人からこの本を紹介されて「あ、これだ」と思ったわけです。

本書のテーマ「身体の使い方(身体技法・身体運用の方法)を知れば、もっと、うまく身体を使いこなせる」という内容は、そのまま、僕の「考え方を考える」に通じます。そうなんです。体も頭も、自分ではちゃんと使えてるつもりでいても、実は、そんなにうまく使えていないのです。

以前、バガボンドを読み解くシリーズの第十五戦「vs 祇園藤次」で紹介した、武井壮さんとタモリさんの「笑っていいとも」でのやりとりを再度ご紹介します。少々長いのですが、含蓄に富んでいるので、初見の型は、是非ご一読ください。

「まず1個は、自分の身体を思ったとおりに動かす、っていうこと。まず一番簡単なことでいうと、たとえば、目をつむって立っているときに、真横に腕を挙げてくださいっていうと、アスリートとかでも、結構上にあがっちゃったりとか。目をつぶってやると、こうやってちょっと下がったりとかすることがあるんですよ。これってすごい問題なんですよ、アスリートにとって。」

「たぶん今タモリさんにやってもらったほうがわかると思うんですけど。目をつむってもらって、真横だと思うところで腕を止めてもらっていいですか? 「ここが真横だな」みたいな。はい、お願いします。(タモリ、腕を横に上げる。少し腕が水平より上に上がっている)」

「みなさんわかるでしょう。これを僕、直しますね。タモリさん、目をつむったままで。これで、さっきよりはかなりまっすぐですね。かなり。タモリさん、ここ覚えてもらっていいですか? 感覚で。ここらへんがまっすぐ、っていうところ。じゃあ1回、目を開けて、下ろしてください。(タモリ、腕をおろす)」

「そうしたら、さっきはタモリさん、手がこれくらいまで上がっていたんですよ。だから、(会場の)みなさんも「ああー」って。まっすぐだと思っているのにまっすぐじゃない、とわかったじゃないですか。今度もう一回、目をつぶって、さっき覚えたところに手を挙げてください。さっきの感覚のところです。(会場 感嘆 拍手)

「これはスポーツが上達したわけでもなんでもないですけど、タモリさんはひとつだけ、腕の「たぶん真横だ」と思うところを覚えたということなんです。」

出所:logmi ※注:この出所のURLは、2017年9月時点で既に無効になってしまっていました。(削除時期は不明です)

自分の身体を「思った通り」に動かせないとゴルフだろうと野球だろうと、まったく上達しない。という文脈の中での会話なのですが、身体運用の真理を伝えているように思います。

また、僕は最近、筋トレをパーソナルトレーナーにサポートしてもらっているのですが、その場でも、まったく同じことを感じています。筋トレの姿勢や、力の入れ方もそうなのですが、とりわけ、腹筋・背筋のバランスよい使い方、体幹の力の入れ方に関しては、「意識できていない・分かっていない」と実感します。

なんとなく だとダメなんですよ。身体も、思考も、しっかりと意識して行うことが重要です。

身体運用のプロ、12名との対談

前置きが、とっても長くなってしまいましたが、本書は、合気道などの複数の武道を修めている「思想家」の内田樹さんが、様々な身体運用のプロフェッショナル12人と対談した記録です。(文章は、内田氏ではなく、橋本麻里さんによる書き起こし、だそうです。)

身体運用のプロと言っても、武道家や、スポーツ選手だけではありません。最初に登場するのが「茶道家」。続いて「能楽師」。その次は「文楽人形遣い」と、なかなか想定外のボールが飛んできます。そして、4番目に登場するのは、なんと「漫画家」。スラムダンクや、バガボンドでおなじみ井上雄彦さんです。井上雄彦さんの場合は、漫画を描くための本人の身体運用、というよりは、身体運用の解釈(スラムダンクのバスケットボールプレイヤーや、バガボンドに登場する武芸者のそれ)に関するお話なのですが、その他、尺八奏者、大相撲力士、マタギ、などの「身体運用のプロたち」と、内田氏が語り合うという非常に興味深い一冊です。

その中でも、おもしろいのは、芸術関連の方々のお話が、武道らしさを多分に含んでいることです。能楽師は「シテ」と「ワキ」で相互に主導権を奪い合いながら進めていく、なんていうのは、とっても武道っぽいですよね。あるいは、文楽では「左遣い」と「足遣い」がガッチリ抑えると「主遣い」は動けない(主遣いが若手の時に、ベテランが左と足をカバーすることができる)というお話も、相手をコントロールするという観点から考えると武に通じる気がします。また、伊勢神宮の式年遷宮においては「秘曲」という音を出さずに頭の中で演奏するが、そのリハーサルを当然ながら音を出さずに”2回”もやる、というのも、武道の型の練習に似ているな、と思います。

場をつくる。場を制する。

しかし、全ての対談に通じるのが「場づくり」です。

例えそれが武道であったとしても、相手と無闇矢鱈と敵対するのではなく、相手と一緒になって場を作る。もちろん、自身が場を仕切り、その場を制することも必要です。

茶道家、千宗屋さんとの対談より、抜粋します。

お茶では「一座建立」といいますが、まさに「座」を作り上げる、そういう意識ですし、お茶における究極的な主客の在り方は、「賓主互換」とその対を成す「賓主歴然」という言葉で表します。

(賓主互換とは)賓が主になり、主が賓になる、つまり自他の区別が混然となってしまうということです。「賓主歴然」とは主と客が歴然と分かたれること。その感応こそが、お茶における主客の理想的なありようだというのですね。

このお話は、コンサルタントたる僕には、グサッときました。独りよがりのプレゼンになっていないか?プレゼンなり、ディスカッションの場において、一座建立ができているか。特に、ディスカッションにおいては賓主互換を行わねばならないが、それに至っているだろうか。(賓主歴然で突き通してしまっていないだろうか・・・)

能楽師 安田登さんのお話も、同じようなことを仰っています。

客席でぼんやり座っていると、退屈なだけ。15分とか20分かけて部隊を一周するだけですから、ちょっと買い物に出かけて戻って来ても、シテは同じところにいた、なんていうこともあり得る(笑)。だからぼんやりみていると、本当に退屈。でも一緒にコミを取っていると、これ以上楽しいものはないし、そうすることで初めて、舞台が「存在」できるんです。
(中略)
呼吸もこのへん(胸)で取るとコミになりませんが、ここ(丹田)で取るとコミになる。呼吸を、胸で取るか、丹田で取るかでまったくちがうんです。

コミ( ≒ リズム、と一旦は理解すればよいと思います)を共にとることで「体感」を送受信しあうことができる。そして、それが、場を共有することにつながる。というわけです。

さらりと読み流すこともできる一冊ですが、いろいろと学びにあふれています。自分自身の体の使い方を考えるのみならず、物事の考え方や、それを部下・後輩に伝えていく後進指導や人材育成にも活きるインプットが満載です。腰を据えて、味わい尽くすことをお勧めします。
日本の身体
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