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第2章「メンバーを変えずにチームで変革を進める法」急がば回れ|ハーバードビジネスレビュー マネジャーの教科書/ギックスの本棚

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
第2章「メンバーを変えずにチームで変革を進める法」急がば回れ|ハーバードビジネスレビュー マネジャーの教科書/ギックスの本棚

チーム改革は一朝一夕にはいかない。

本日は、マイケル・D・ワトキンス教授の「メンバーを変えずにチームで変革を進める法」を読み解いていきましょう。

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人員入替による戦力UPは、非現実的なソリューション

某コンサルティングファームに勤めていたころ、優秀なマネジャーの条件について考えたことがありました。僕の中では、それは3つありました。

  1. イケてる初期仮説を立てる
  2. その初期仮説を迅速に検証できる優秀なメンバーを集める
  3. 仮説が間違っていると判断したら、即座に方針転換できる

以上です。

いや、異論があるのは分かります。が、戦略コンサルティングという特殊な仕事においては、この3つで大丈夫でした。言い換えると、ひとつめは、顧客の業務を理解する力を含む情報処理能力とそもそもの地頭の良さ。ふたつめは、人望と交渉力≒社内政治力。みっつめは、客観視するチカラとちゃぶ台返しをする度胸・胆力。という感じですね。

難点は、3つめが備わっているのかどうかは、土壇場にならないとわからない。ということですね。特に、優秀であればあるほど、1の初期仮説がイケてるわけなので、3の状況にそもそもならないんですよね。なので、3が備わってないんだけど永遠に露呈しない見せかけの優秀なマネジャーが潜んでいたりもするんですよね。いやはや。

と、本題からそれました。今回は、上記のうち、2に関連するお話です。コンサルティングファームという、地頭が良くて、長時間労働を厭わず、成長意欲に溢れた若者(*1)を相当数確保している特殊な環境においては「こいつは使えない」と思ったら、即時リリースし、より優秀な人材を補充する(*2)という必殺技を使えるんですよね。

それが会社組織として許容されるのは(正確に言うと、完全に許容されているわけではないが、まぁ、仕方ないという空気感があるんですよね)、数週間という極めて短かい期間で「顧客から頂いている高額なfeeに見合った価値を提供する」ということを最優先しているからなんですね。

そういうわけなので、一般的な企業組織におけるマネジメントの問題が、あまり表面化しにくい構造が(特に戦略領域の)コンサルティングにおいてはあったんじゃなかろうか、と僕は思っています。

でも、これって、特殊ですよね!普通の会社では、そうはいきませんよね!

*1:最近は、ワークライフバランスとか働き方改革とかダイバーシティとかいう素敵な思想があるので、かなり変わってきたんじゃないかと思ったりもしますです。はい。
*2:なお、反対に「このマネジャー、役に立たない」と下のメンバーに思われると、シニアマネジャー、パートナークラスに直訴してキックアウトする、ということも可能です。後輩には嫌われないようにしたいものです。

既存のチームに新任マネジャーとして参加したときに

この論文で対象とされるのは「既存のチームに”新しいマネジャー”として着任した際に、どのように既存チームのメンバーで価値を出すか」というシチュエーションです。

既存チームに新たなリーダーとして着任した際にやるべきことを整理すると・・・

1.チームの状況を理解し、戦略を立てる
・事業の状況(危機を脱するのか、好調を維持するのか)
・目標達成のための各メンバーの役割(ロール)の寄与度(重要なものからテコ入れ)
・各役割におけるチームプレーの必要性(個人プレーで良いなら意識改革は後回し)
などを考慮して、どこから手を付けていくかを考える

2.戦略に基づいて、個々人を評価
実務的には、上記1と同時に行うことになることが多いでしょう(実は、論文内でも切り分けられていません)が、上記方針に基づいて、「この人達にはビジョンを伝えていく必要がある」「この人は、一旦は現状維持で良いが、本質的にはフィットしていない」などということを考えていく必要があります。

3.優先度の高いところ(および、着手可能なところ)から改革
協働が必要なのに協働関係を築けていないところがあれば、協働するように働きかける必要があります。あるいは、人の入れ替えがどうしても必要な場合は、早急に入れ替えられるように手配を進めます。ただし、人材の入れ替えは難易度が高く、実施できないケースもあるため、後回しにせざるを得ないことが多いでしょう。
では、どうするのか?それが、この論文の肝です。

チームの再構築手順

チームの再構築は、「チーム構成の見直し」→「足並みをそろえる」→「業務のやり方の統一」→「行動の整合性確保」の4つの手順で進めるべき、と語られます。順番に要点をリストアップします。

チーム構成の見直し:

以下のような取り組みを行うが、ひとつめを除いては時間がかかる。

  • 切迫した状況では人材の入れ替えを検討
  • 「高い成果を求める」という期待を伝え、成果が出せない人は自ら離脱するように仕向ける
  • ポテンシャルを見極め、育成する
  • 得意不得意に合わせて、チーム内で配置換え
足並みをそろえる:

以下の4つを設計するが、ビジョンとインセンティブが無いと、基盤が揺らぐ。インセンティブのコントロールはマネジャーの権限範囲を超えている場合があるので、経営層の求める業績目標よりもさらに高い目標を設定するなど、会社に対する説得材料を持つことも必要になる。

  • 何を達成するのか=ミッション、目標、業績指標
  • なぜそうすべきなのか=ビジョンステートメント、インセンティブ
  • どうやって達成するか=全体戦略とチーム戦略、実行プラン
  • 誰が実行するか=各メンバーの役割と責任
業務のやり方の統一:

「みんなが結束して仕事をするとしたら?」という視点で、仕事のやり方を考える。具体的には・・・

  • チームの核となるメンバーの人数の増減
  • サブチームを設ける
  • 会議の種類や頻度の調整
  • 会議の運営方法の変更
  • フォローアップ手順の刷新

などが挙げられている。前任者の業務運営手法をそのまま引き継ぐのではなく、「仕事のやり方を縛っている実質的な制約」を理解し、その制約下で効率と生産性を高めるためになにができるか?を考えることから着手すべき。

行動の整合性確保:

望ましい行動が何であるかについて共通認識を持たせる、その望ましい行動を定着させる、ということが極めて重要です。もともとパフォーマンスが低い組織に、新任マネジャーとして着任したケースにおいては、既存の集団特性が”好ましくない”おそれがありますので、意識・考え方・価値観を変えていく必要があります。そのためには、例えば・・・

  • 有言実行するタイプのリーダーであると認識される
  • 信頼を得てから、チーム内の機能不全の原因を深掘りする(例えば、調査など)
  • 原因に応じて、対策・方針を講じる
  • 対策・方針を徹底する(言いっぱなしで終わらない)
  • 定期的(例えば、四半期ごと)に行動原則の順守状況を振り返る

というようなことを行っていくことになる、と説かれます。

新任でなくても使える ”考え方”

このように、この論文は「前任者の代わりに、既存チームをどうするか」という視点で書かれています。しかしながら、この内容は、その他の状況における”チーム変革”にも、問題なく転用できます。

この内容を「既に自分が管理しているチームを変革する」場合、もしくは、「自分が所属しているチームのマネジャーに登用された場合」にしっかりと適用していくにあたっては、以下の違いに意識を向けると良いでしょう。

有利に働くポイント

  • 組織内の問題や、メンバー間の関係性を熟知しているので、改革の方向性を見出しやすい
  • 不平・不満や、定性的なインセンティブ(日当たりの良い座席、等)の有無を把握しているため、「変更するとハレーションが起きるポイント(=地雷)」の所在に土地勘がある

不利になりやすいポイント

  • 何かを変更することが、すなわち自己否定を意味するので、物事を客観視する力や自己批判の精神が求められる
  • 既に、自身のパーソナリティーが知られているため、急に「違う価値観」を出しても、戸惑いを与える(信頼を得にくい)
  • 人間関係が出来上がっているので、成果の出ない既存メンバーに対して、厳しく対応できない

 

新たに赴任しようと、既存チームを改革するにせよ、いずれにしても、いきなりメンバーを総入れ替えしたり、優秀な人材をバンバン採用していく、というようなことは、極めて例外的な状況においてしか実行できません。

時間をかけてチームを変革していくことになるので、地道に手順を踏み、意識改革を行っていくしかないのです。急がば回れ。

 

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