第6章「心の知能指数”EQ”のトレーニング法」人は”感情”によって動くのだ|ハーバードビジネスレビュー マネジャーの教科書/ギックスの本棚

AUTHOR :  田中 耕比古

感情を理解し、感情をうまく使え

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本日は、心理学者であるダニエル・ゴールドマン氏による「心の知能指数『EQ』のトレーニング法」を読み解きます。

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EQが高いって、どういうこと?

コンサルティングなどという因果な商売をやっていると、どうしても「心の奥底までガチガチの論理性で固められる」という傾向があります。もちろん、年を取れば人間は丸くなるものなので、ある程度解消されていき、また、それにつれて「あの頃は若かった」とか言い出すわけですが、本質的な部分は三つ子の魂百までという奴で、ひょんなことからバリバリの武闘派の血が騒ぎだして大変なことになったりもするんですよね。(自戒)

そんな生き方をしている中で、もっと若い時から意識しておくべきだったよなーと思うのが「EQ」です。

ええ。聞いたことはあるんですよ。もちろん。昔から言われてましたもんね。でも、実際、どんなもんなのよ?と自問すると、答えがない。EQってなに?ってなります。

EQ≒感情制御による周囲との関係性改善能力

この論文の中では、EQとは何か、については語られませんので、wikipedia先生から引用しておきましょう。

心の知能指数(こころのちのうしすう、英: Emotional Intelligence Quotient、EQ)は、心の知能 (英: Emotional Intelligence、EI) を測定する指標である。心の知能とは、自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能を指す。

出所:wikipedia/心の知能指数

要するに、IQが「認識」に関連する知能を語るのに用いられるのに対して、EQは「感情」にまつわる知能について語っているわけですね。

加えて、この論文で語られる「職場」において、EQは、以下の5つの因子に区分されます。

  1. 自己認識
  2. 自己統制
  3. モチベーション(動機付け)
  4. 共感
  5. ソーシャルスキル

これら5つの因子については、後段で、もう少し詳しく考察しますが、ざっくり言うと「自分の感情をコントロールし、他者とうまくやることができる」ということが、職場においてEQが高い状態だ、と理解すればよさそうです。(まぁ、反省しかないんですけども)

EQが高いと何が嬉しいの?

では、EQが高いと、何が嬉しいんでしょうか。もちろん、EQが高い方が、周囲とうまくやれるってのは分かったんですが、それが、企業・組織にとって、どういう風に作用するんでしょう。

この論文では、職場内での地位が上がるほど、EQが重要な指標となる、と述べます。

仕事の技術、IQ、EQが好業績に及ぼす影響を比べてみたところ、企業のどの階層でも、EQが他の二倍もの影響力を与えていた

その企業での序列が高いほどEQが重要な役割を果たしており、仕事の巧拙はさほど重要ではなかった。言い換えると、経営幹部の場合、地位が高くなるほど、EQが優れたリーダーシップを決定づけていたのである。優れたリーダー能力を備えた人と、平均なリーダー能力しかない人を比較してみると、能力差の九割近くはEQによるものだった。

従来のIQや技術的な能力が、強力なリーダーシップに無用だとは考えない。しかし、EQを備えていなければリーダーシップは完成しない。以前は、企業のマネジャーが「EQを備えていることは、悪くない」と考えられていた。だが、いまでは業績向上の観点から、EQは「マネジャーが必ず備えるべきもの」であることは明らかである。

ということで、マネジャーを名乗るのであれば、EQを高めていく(あるいは、既に高いとしても、それを維持していく)ことが求めらるわけですね。

ちなみに、個人的感覚としては「マネジャー(もしくはそれと同等の職責による)の重圧に向き合っていると、心が荒む=EQが下がる」という傾向があると思います。鍛えるのみならず、維持するための訓練って大事なんですよね。ほんとに。(筋肉と同じですよ)

5つの因子を簡単にご紹介すると・・・

詳しくは、本書をご購入いただき、この論文をお読みいただくのが良いと思うのですが、簡単に上述した「職場におけるEQの5つの因子」を解説しておきましょう。

1.自己認識

自分の感情の動きや性格をしっかり捉えること。また、それが他人に与える影響も理解している必要がある。

(自己認識が高い人は)例えば、給料が魅力的な転職話を持ちかけられても、その仕事が自分の主義や主張、長期的な目標に合っていなければ、まよわずその話を断ることができるだろう。ところが、自己認識に欠ける人は、自分が本当は何を大事にしているのかに目を向けず、揺れる心に引きずられ、判断ミスを犯しがちである

自己認識がもたらす証拠の一つは、自分(の過去の失敗など)を笑い飛ばせるユーモアのセンスなのである


※上記引用内の()内は、加筆

2.自己統制

自分の感情や衝動を抑制し、周囲の人たちと信頼関係を築くことができる。そして、急激な環境の変化にもキャッチアップすることができる。

ただし、この能力は、外から見えにくいし、正当に評価されにくい。

感情の自己統制、すなわち思慮深さという資質、曖昧さを判断する力、変化への適応性、悪しき衝動に「ノー」と答える清廉潔白さは、えてして見落とされがちなのである。

3.モチベーション

内発的な動機として、達成感を基軸に捉えることができる。外に答えを求めないで、自ら、高い目標を掲げ、それを達成していくことができる。

多くの人が、巨額な報酬、名誉ある役職、一流企業に勤めていることへの社会的評価などの「外的要因」を動機にしている。ところがリーダーシップに優れた人は、達成感を得るために何かをしたいという欲求が強い動機になっているのである

4.共感

コーチングやメンタリングとも密接にかかわってくる。部下の感情を敏感に感じ取り、彼らが抱える不安を理解したり、高揚感やモチベーションの高まりを把握したりすることによって、それに寄り添っていくことができる。

共感は「あなたはオーケー、私もオーケー」というような安っぽい言葉とは違う

共感は、少なくとも次の三つの理由からリーダーシップにとって非常に重要である

1.チームによる作業の拡大

2.グローバル化の加速

3.有能な人材を社内に確保し続ける必要性の拡大

5.ソーシャルスキル

自己認識・自己統制・モチベーションは自己管理能力に属する。共感とソーシャルスキルは人間関係を管理する能力。ソーシャルスキルによって、他の4つの因子をより効果的に使うことができる。

ソーシャルスキルとは単に人当たりのよさの問題ではなく、むしろ意図的な人当たりのよさなのである。(中略)自分の望む方向に人を動かすことなのである。

ソーシャルスキルは、EQの因子の中で最も重要な因子であるといえる。。自分の感情を理解し、コントロールして他の人の気持ちと共感できれば、非常に効果的に良い人間関係を維持できるだろう。また、ソーシャルスキルは、動機づけによって高めることができる。(中略)

ソーシャルスキルに優れた人はチーム運営の名人なのだが、そこで機能しているのは共感である。

同じように、ソーシャルスキルにたけた人は、説得 ― 自己認識、自己統制、共感の総合的な表れ ― の名人である。

という感じです。詳細は、書籍にあたって、是非、理解を深めてください。

最後に、ロジックモンスターな僕たちも、しっかり勇気づけられるポイントを引用しておきます。

一つ確かなことがある。それは「EQは年齢と共に高まる」ということである。これをまさに言い表しているのが、昔から使われている「成熟」という言葉である。

やっぱ、人は丸くなれるんですね。諦めずに、頑張ろうっと。

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