clock2015.04.27 09:05
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アウトカムから考えるデータ活用:リアルタイム分析は本当に必要なのか?

AUTHOR :  網野 知博

問うべきは「リアルタイムデータによるリアルタイムな分析が、競争力強化に寄与するか?」

以前DOMOさんのパネル・ディスカッションに参加させて頂いた時に発言した内容なのですが、アレから1年たった今も同じようなテーマに関してご質問を受けますので再度記事で書いておきたいと思います。

「本当にリアルタイムなデータは必要ですか?」「本当にリアルタイムな分析は必要ですか?」

DOMOさんの当時のアンケート結果では、「8割以上の方はリアルタイムでデータを見られることは重要だと答えていますが、一方でその中で実際に必要なマーケティングデータにリアルタイムでアクセスできている人は3分の1しかいない。」ということでした。しかし、「リアルタイムなデータや分析は重要か?」と聞かれれば「重要だ」と答えると思います。

では問いなおしましょう。「リアルタイムデータによるリアルタイムな分析により、貴社はどの程度競争力の強化が実現されるのでしょうか?」

もっと踏み込んで聞いてみましょう。「業界3位のポジションがそれにより1位に上がれますか?」「それにより利益率が倍に上がりますか?」

そもそもリアルタイムデータであることは本当に重要なのか?

結論を先に書くと、多くの企業でリアルタイムデータは重要ではありませんし、必要でもありません。一度冷静になって、データの収集頻度や更新頻度、そして分析頻度、分析した結果を解釈して打ち手につなげる活用頻度をまとめてみるとよいでしょう。そして、それを実施して得られるビジネス的な価値を考えてみると、本当にリアルタイムなデータやリアルタイムな分析が必要なのか、投資に対して成果が見合うのかを見極めることができます。

「リアルタイム」と「タイムリー」の違い

リアルタイム:

リアルタイム(Real time)とは、英語で「即時に」や「同時に」、「実時間」という意味の言葉。

タイムリー:

タイムリーとは時勢、時期に合っているという意味。

出所:wikipedia

マーケティングでデータを活用する際には、「リアルタイム」と「タイムリー」の違いを認識する必要があります。実は冷静に考えていくと、マーケティングで活用する上で、「タイムリー」は絶対条件になることが多いですが、そのためのデータ収集やデータ分析で「リアルタイム」が求められるものはそこまで多くありません。

プロモーション系の施策を行う際を例にあげましょう。その場合は「リアルタイム」と「タイムリー」にも3つの組み合わせパターンがあります。

タイプ1:
過去のデータをバッチ処理で分析し、こちらが良いと思うタイミングで訴求する。(つまり、タイムリーに訴求を行う。)

タイプ2:
過去のデータをバッチ処理で分析し、あるトリガーでリアルタイムに訴求する。

この場合は、事前のデータ分析結果に基づき、ある駅の改札を通った特定の人にスマホに最適なクーポンを送付、などになります。分析はバッチで行っており、誰が何をしたらどういう訴求をすると事前にルールを決めておき、リアルタイムに発生するトリガーをもとに訴求を行う場合がこれに当たります。

タイプ3:
リアルタイムに収集したデータを基にリアルタイムに分析して、その分析結果に基づきリアルタイムで訴求する。

ご想像できると思いますが、タイプ3はシステム投資的に考えてコスト負担が相当上がってきます。テクノロジーの進歩により、タイプ3のハードルは、以前と比べてものすごく下がりましたが、それでもタイプ2と比べると仕組みにかかる投資は段違いです。タイプ2ではなく、タイプ3まで必要な程のビジネスがどれだけ存在するでしょうか?

言い換えれば、タイプ3により「業界3位のポジションがそれにより1位に上がれる」「それにより利益率が倍に上がる」なら真剣に実現の方法を考えるべきです。これはまさにビッグオポチュニティが転がっている状況です。

一方で、現実を見ると、ここまで切り分けて、リアルタイムなデータ活用がしたいという方はあまりいらっしゃらず、リアルタイムなデータ収集やデータ分析ができないことが問題であると言う架空の問題を作り出していることがあります。所謂「思考停止ワード」と言うやつですね。

多くの企業に取ってリアルタイム性は重要なビジネスイシューではありません。自社の競争力強化につなげるためのデータ活用と言う視点で見た際に、「競争力強化を前提に考えた場合に、各業務ごとや活用シーン毎に、データの収集頻度や更新頻度、分析頻度、分析した結果を解釈して打ち手につなげる活用頻度はどうすべきかのか?」ということになると思います。

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